昔々あるところに魔王がおりました。 魔王は人間界の様子を写し出す鏡を眺めて、日々思っておりました。 「人間はなぜ、同じ種族なのに争い合うのだろうか」 と。 そこで魔王は、ある秘策を思いつきます。 「そうだ。人間は共通の敵を持てば類稀な団結力を発揮する。ならば、私自身が人間にとっての脅威になろう。さすれば、暫しの間でも人間界に平和が訪れるであろう」 そう思った魔王は世界を作り変えました。 それから幾年が過ぎたか。 魔界に住む魔王は、現在13代目。 魔界歴18歳(人間年齢54歳)の若き魔王は、執務室で声を上げる。 「人間界行きてえ!」 「ダメです」 メイド長パイン・パイルにバッサリと切り捨てられた魔王の元に執事兼兵士長ネイビル・ディループが飛び込んできた。 「大変です魔王様! 城の前に捨て子がおりました!」 「「え!!」」 これが、全ての始まりだった。
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