主人公、井置隼人は大学進学を機に上京して20年以上が経つ。結婚して子供にも恵まれ出世もしているサラリーマン。関西の実家に帰省中に偶然、昔の体育教師、坂口義彦と出会い、その記憶を回顧する。 中学受験に合格して、ミッション系中高一貫教育の名門私立の男子校に入学した隼人は、中学一年生の夏休みの合宿において、海岸のテトラポッドの上で坂口と二人きりの状況になる、これが全ての始まりだった。 静かで控えめな表面上のキャラの中に眠る、男達を惹き付けて止まない妖しい魅力を持つ自分を徐々に自覚する隼人は、小悪魔のように男達を翻弄していく。その魅力は「甘い蜜を閉じ込めた貝のようだ」と、担任であり国語教師の平塚在昌は言った。 高等部に上がり同級生からバンドに誘われて軽音楽部に入った隼人は、学院祭の観客を魅了する。校外からも注目を集めることになった隼人は、次第に他人の目に窮屈さを感じ、独りを好むようになる。そんな隼人を誰よりも理解し、性的衝動を感じつつも隼人を包み込む坂口、そして静かに燃え上がる恋心を徐々に発露していく隼人。最後の一線を越えない微妙なラインの恋愛を楽しむ二人は、やがてそれこそが「本物の官能」であることに気づく。 最高の恋愛、最高の相手であることを確信した二人は、この境涯を喪失する怖れと「セックス」という甘い誘惑の狭間で揺れていく。 しかし、ギリギリの緊張に保たれた二人のバランスを「卒業」という時の楔が崩していく……教師と生徒の禁断の恋愛を題材として、「純愛と性愛の狭間に燃え上がる究極の官能」をテーマに描いたBL恋愛小説。
読了目安時間:1時間48分
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