島国ヴィヴァルディには存在しないはずのサクラを見た瞬間、ペリーウィンクルは気付いてしまった。 ここは、前世の自分がどハマりしていた箱庭系乙女ゲーム『恋の花をあなたへ』の世界で、自分が本編とはなんの関係もないただのモブ子だということに。 前世は社畜、今世はまったりライフをエンジョイしていた彼女は、ただ神に感謝した。 なにせ、前世の彼女は常々「来世こそはゆとりのある生活を送りたい」と願っていたから。 ところが、ひょんなことから同じく前世社畜の転生者である悪役令嬢・ローズマリーと知り合ってしまう。 似たような境遇で、なおかつ転生したのにまったりできないでいる彼女に同情したペリーウィンクルは、彼女が前世の推しだったこともあり、なりゆきで平和的な婚約破棄を目指すことになる。 『恋の花をあなたへ』は、メインの恋愛パートと箱庭パートに分かれている。 箱庭パートで草花を育て、収穫した草花を意中の相手へ贈り、好感度を上げ、そうすることでストーリーの糖度が増す、というわけだ。 庭師であるペリーウィンクルは、まさにおあつらえ向きの人物だったのである。 ストレスによる爆食いで激太りしていたローズマリーを、メディカルハーブの知識と過保護な妖精・ヴィアベルの助力によって解消し、なんとか無事に本編を迎えた。 そうして向かったゲームの舞台『妖精使い養成学校』で、ペリーウィンクルはローズマリー以外の悪役令嬢と攻略対象たちにも出会う。 ローズマリーだけを助けるつもりが、彼女のせいで他の悪役令嬢まで助けることになってしまうペリーウィンクル。だけど、ローズマリー(の見た目)がかわいすぎて拒否できない。 きな臭い行動を繰り返すヒロイン。面倒ごとばかり持ってくる、かわいいけれどムカつくお嬢様(ローズマリー)。それだけでも大変なのに、ずっと一緒だと思っていたヴィアベルから距離を置かれてしまって……。 これは、異世界転生してしまったモブ子が、メディカルハーブの力でお嬢様の婚約破棄を目指しつつ、兄のように思っていた過保護な妖精の深い愛に気がつく物語。
読了目安時間:4時間36分
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