「ふう……。今日も平和だな~」 私はそう呟きつつ、森を眺める。 ここは世界最果ての秘境。 獰猛な魔物が出るけど、私は強いから大丈夫。 私からすれば、ただのおいしいお肉だ。 「よーし、今日は狩りに行こっかな」 そんなことを考えていると……。 「きゃあああっ!」 不意に悲鳴が聞こえた。 この森には滅多に人は来ないんだけど……珍しいこともあるんだなぁ。 とりあえず、助けに行こうかな。 私は声がした方に駆け出す。 「ゴアアアッ!!」 そこには巨大なクマがいた。 「いやあああっ! 誰かっ! 助けてえええっ!!」 へたり込んだ少女が泣き叫んでいる。 その手に握られている剣は、中ほどから折れていた。 クマと戦ったときに折れたみたいだね。 「あなた、下がってなさい。私が倒すから」 私は少女の前に立って、剣を構える。 「あ、あなたはっ!?」 「私? 私は通りすがりの隠居人だよ。サクッと片付けるから、気にしないで」 「む、無理ですよぉ……。ブラッディベアーを倒すなんて……」 少女が絶望的な表情を浮かべる。 確かにブラッディベアーはそれなりに強い魔物とされている。 そこらの兵士や冒険者なら勝てる見込みはないかもだけど……。 「大丈夫。任せておいて」 私は自信満々に答える。 「あああ……。もうおしまいですぅ……。剣聖様にお会いする前にこんな魔物と出くわすなんてぇ……」 少女が泣き言をこぼす。 そんなことを言っている間にも、クマがこちらに狙いを定めている。 「グオオオッ!」 そして、私に向かって突進してきたのだった。
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