時は20X X年。 経済は大恐慌、単純労働はAIに切り替わり、温暖化が危惧された過去も実際には一年の約半分以上が雪に閉ざされた世界になっていた。 ピアノバーで歌う青年、九条守(くじょうまもる)は退廃的な生活を送りながらもピアノ弾き語りで生計を立てていた。 夢や希望を置き忘れてしまった彼だが、触れ合う人々や言葉によって少しずつ生きる力を取り戻していく。 古びたグランドピアノは行き交う人々の心を映し出す。 今夜も九条は弾く。そして歌う。背広をなびかせながら。 今夜も彼は何を感じるのか。 「今夜もピアノバーで俺は歌っている」
読了目安時間:45分
この作品を読む