隣国カメルアの後宮に拉致され、寵姫として入れられた娘カーサ。 愛のない情事に絶望した彼女は、相手の王子オルグを衝動的に殺してしまう。 死罪を覚悟していた彼女だったが、オルグが父王サレス二世に対する叛逆を企てていたことが判明、彼女の罪は見逃されることに。 だが、オルグの叛逆を秘すために、カーサの故国への帰還は認められず、彼女は護衛兼監視人の軍人ザルツと暮らすこととなる。 ザルツはカーサに言う。「俺はお前を護ろう。だが、逃げるか死を選ぶなら、俺を殺してからだ」 こうしてカーサとザルツの奇妙な共同生活が始まる。 そのうちに、国内でオルグの残党による叛乱が発生。 叛乱軍は講和の条件にカーサの引き渡しを要求。サレス二世はそれを呑む。 だが、ザルツはカーサを護衛の意地において守り抜き、悲嘆に暮れるばかりであったカーサの心は、少しずつ溶け始める。 しかし、ザルツには王に逆らえない事情がある。幼馴染みの寵姫アーリーと密通の疑惑を持たれ、彼女を自ら手にかけた過去があった。 それからザルツの心は昏く濁ったままなのだ。それをなにより心配するのは、ザルツの親友、宮廷医官のセダイ。 彼はザルツの己を顧みない姿勢に憂慮するが、ついにそれは現実のものとなる。 カーサの故国からやってきた、カーサの許嫁サズとの決闘をサレス二世に強要され、勝ってしまった彼は、罪の意識に耐えられず、 遂にカーサの前で自刃し、カーサを逃がしてしまう。 それを知り激怒し絶望するセダイ。セダイの手当で一命を取り留めるも、ザルツは牢に入れられてしまう。 牢の中でサレス二世は、拷問を受けるザルツに憎悪をぶつける。 「余はお前からアーリーを、カーサから我が子オルグを奪われた、これが憎まずにいられようか……!」 一方、故国に帰ったカーサは、ザルツが気に掛かってならない。 カーサはザルツに対する恋心を認め、サズと家族に別れを告げ、ザルツを救いにカメルアへと馬を飛ばす。 そのとき、カメルアでは新たな叛乱が発生していた。今度の首謀者は、ザルツの旧知、アーノルド。 同情したアーノルドは彼女を助けるが、その直後、カーサもまた囚われ牢に入れられる。 牢の中で傷付けられたザルツに再会するカーサ。サレス二世はそんな2人に目の前で睦み合うことを要求する。 その時、ザルツを救いに牢に飛び込むはセダイ。 果たして、カーサとザルツの運命や如何に。
読了目安時間:1時間32分
この作品を読む