俺ことテリー・ダマスカスは一仕事を終えたあとに、今まで一緒に闘ってきた幼馴染であり仲間であり恋人であったアリスにこう言った。 「アリス、悪いが今日で君はこのパーティーから抜けて貰う。正直なところ、君の実力では今後も俺たちのパーティーでやっていくことは難しいだろう。このままだと君は確実に大怪我するか、最悪だと死に至るかもしれない」 これは本心であり本音ではなかった。 それでも俺は今後の自分たちのためにも伝えるしかなかった。 「……うん、分かったよ。そうだよね。これ以上、足手まといの私がいたら皆の迷惑だもん。ごめんね、テリー。今までずっと嫌だったんだよね?」 アリスは俺に対して怒りもせずに、俺と僧侶のマイアを見て「お幸せにね」と薄っすらと涙を浮かべた笑みとともにパーティーから抜けた。 そして、これは2週間前にパーティーに入ってきた僧侶マイアに提案されたことだった。 アリスがこれからもっと危険な目に|遭《あ》う前に辞めさせるべきだと。 Aランク冒険者となり勇者パーティー候補となった【飛竜の牙】の中で、アリスだけがCランクを超えるほどレベルが上がらず、この国では珍しく魔法が使えない体質だったからだ。 それでも俺は一向に構わなかった。 俺が頑張ってアリスを守ればいいのだと。 そう、今の恋人であるマイアに提案される前までは……。 だが、このときの俺は知らなかった。 アリスを追放したことが俺の破滅に向かう大きな一歩だったことと、愛くるしかったマイアという女の本性が別にあったことに――。 これは自分勝手な理由で恋人と別れたことによって、後悔と絶望と懺悔する男の物語。
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