1998年1月28日のことだった。 とあるデパートの一角に悲鳴が響き渡った。 その悲鳴を合図に、人々の視線が向かった先では、一人の男が子供を抱きかかえ、手に持ったナイフを突きつけていた。 男の名前は浮世一平。 近くにいた小学生、新谷瑞樹を人質に取って、迫る人々から逃れようとしていた。 その浮世に近づこうとしている人物が二人いた。 一人は後にノーライフキングと名乗る男で、もう一人はアンタッチャブルと名乗る少女だ。 二人は浮世に声をかけながら、慎重に近づいていた。 この時、周囲を囲う野次馬の多くは浮世のナイフから滴る血を目撃していた。 新谷に怪我をない様子を見るに、そこに至るまでに何者かを傷つけてきたのだろう。 一歩でも間違えれば、新谷も傷つけられるかもしれない。 その緊張感の中で、ノーライフキングは説得を重ねた。 「分かった。君の願いを聞こう」 そして、ノーライフキングがそう言った瞬間、浮世は目に見えて警戒を解いた。 その瞬間、アンタッチャブルが浮世との距離を詰めて、一気に手を振るったかと思えば、浮世の握っていたナイフが宙を舞った。 見れば、アンタッチャブルの腕は刃物のように変化し、浮世のナイフを薙ぎ払ったらしかった。 その変化に人々が驚いている中、アンタッチャブルは更に腕を振るい、浮世の手足を吹き飛ばしてから、その場に浮世を拘束した。 その隙にノーライフキングが新谷を保護し、人々は目の前で起きた凄惨な光景に絶句する。 こうして事件自体は収束するが、この事件は様々な批判を生むことになった。 しかし、それらの声も政府による一つの発表と、それに関連する類似の事件が発生したことから、次第に収束を迎えることになる。 その時の発表というのが〝怪人〟という人ならざる存在と、それを倒すために生まれた〝超人〟という一種の超能力者の存在だった。 やがて、浮世一平の起こしたこの事件は〝最初の怪人事件〟と呼ばれるようになる。 あれから25年が経過した2023年の2月の末。 現在、超人も、怪人も、世間の常識となっている。 ※「小説家になろう」に投稿している同名作品と同じ内容です。
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