インターネット上に密やかに存在するそれは「灰色のページ」と呼ばれていた。 特殊な状況、問題、現象、事件に困った人間が検索を繰り返すとある時、たった一ページだけがヒットする。 「灰色の問題でお困りですか?」 そのページをクリックすると進むのは真っ白なページに一文。 「誰にも理解されない問題でお困りでしたらその内容をご記入し、送信ください。当方の範疇に当てはまるものである場合、あなたをお助け致します」 そうして状況を送信すると返信が返ってくる。そうして、理解不能な出来事を解決してくれる者が現れると。 ※ 「灰色」を生業とする日昏マチと纐纈ヒムラ、佐久間カケルの一行は依頼を受けて真夏の海へと向かう。 依頼人の少女、その友人の少年。ある日彼らが海で語り合う最中、少年が記憶をなくした。「記憶をなくてしまった」少年を、助けて欲しいと。 記憶は確かになかった。けれどそれは日常生活に支障がない程度の差異であり、大元の記憶に問題はない。 人の名前も顔もはっきりと覚えている。 だが、少女は彼の記憶がないと言う。 そして少年もまた、少女の姿だけが、変化していると言う。 少年の記憶は、少女に関わるものだけが所々消えていた。それ故、少女には少年が記憶をなくしていると感じられていたのだった。 そして、マチ一行が調べを進める中、この海では何件もの「記憶をなくしてしまう」事件が起きていたことがわかる。 そのどれもが少年のように僅かな違いを訴えていたものだが、ある一人の男だけは「この世界が違う」のだと嘆いた。 ※「依頼人」に起こる様々な不思議な出来事、グレーゾーンの現象を解決していく怪奇系ミステリー。