アラームが鳴る前に目が覚める、すこし奮発して買ったダブルベットの上、スマホの充電プラグを引っこ抜いた。やはりこの部屋は一人で住むには広すぎるようで、もう使っていない部屋の入口付近には薄っすらと埃が見える。 ❝……では、こちらは〇市の様子です、白鯨の出現から一年が経ちましたが瓦礫や漂流物など、街には今も尚災害の爪痕が残っており…………❞ 妻が一年前に亡くなった、まだ24歳だった、子供はまだおらず、まさにこれから辛くも幸せな生活が始まろうという時、奴が現れた。 ❝……なんとも美しい音色の鳴き声を上げ姿を現した白鯨、その全貌はいまだはっきりとしておらず、ただ津波を引き起こした原因と予想されています。震災以降その姿は一度も…❞ 白鯨は一年前に現れ、数時間後…一瞬にしてあまりに多くの命を奪った。 大切なものとは、一組の夫婦の物語
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