煌びやかな金髪。つり上がった瞳。孤高な雰囲気。高圧的な態度。厳しい言動。誰もが畏れ、羨み、妬み、恨み、しかし遠巻きに見ることしかできなかった帝国の才女――公爵令嬢、シャルティア・エステラ。 そんな彼女は今日、皇太子ウィンナイト・アルフィス・グランテードに婚約破棄をされ、辺境地の領主である伯爵のとりなしにより、一時辺境へ謹慎に行くこととなった。 悲しさや苦しさを押し殺して眠りに耐える彼女の耳には、魔性を感じさせる男の声が直接頭に流されて聞こえている。 馬車の中で揺れも気にせずシャルティアの隣に立っている近衛護衛、エレインが彼女をニコニコと見守っている。 辺境地に着けば、和気あいあいとした領民の様子にも驚かされたし、領主が怖いほど歓迎してくれた。 とにかくどこへ行っても好意ばかり向けられるという、初めての経験に戸惑うシャルティアだったが、いつも一歩引いてシャルティアを見守っていたエレインがあの日、『ある行動』をしたことで、事態は一気に動き出す。 周囲の人々の振る舞いが徐々に変化していくにつれて、シャルティアもまたゆっくりと悟っていく。そして、思い出していく。 シャルティアに隠された真実。この世界で何が起こっているのか。現在の皇太子の恋人であり、覚醒したリリアナ・フォレスト、そして皇太子ウィンナイトはどうなるのか。それらが明かされ始めた時、最強の者が世界に再度降り立つ。 ――見たことある、聞いたことある。でも、思い出したくない。 ――見てほしい。聞いてほしい。そして、思い出してほしい。 ――見ないでくれ。聞かないでくれ。一生、忘れていてくれ。 ――知らなくていい。解らないでいい。ただ、そばにいて。 ――見えなくとも。聞こえずとも。今度は必ず、助けるから。
読了目安時間:1時間56分
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