一日当りの訪問者数が二億PVを超え、小説からアニメ、劇場公演にまで至り、ライトノベル業界の地図を塗り替えた名作『魔法科高校の劣等生』や『この素晴らしき世界に祝福を』を生み出した『小説家になろう』は、Pixivとニコニコ動画に並ぶ国内最大級の巨大プラットフォームである。 しかしそれを運営する株式会社ヒナプロジェクトは、WEB小説投稿サイト市場の覇者でありながら資本金は三五〇万円、常勤者数は三六名と吹けば飛ぶ程度の小企業に過ぎない。 また「アマチュアが小説を持ち寄るコミュニティ」から「プロ作家への登竜門」という位置づけまでになったにも関わらず、現在まで「ネットのオモチャ」という汚名を払拭できず、サービスの内外でトラブルが後を絶たない。その間にも既存の出版社やITベンチャーが新サービスを立ち上げ、個人企業あわせると百件以上のサービスが立ち上がり、日本の出版業界の王者KADOKAWAグループも参戦している。 結果、『小説家になろう』は他社のサービス、それどころか個人サイトよりも陳腐化したサービスにまで成り下がった。何故、巨大プラットフォームは停滞したのだろう。その原因は歪な収益体制にあると考えられる。その姿勢はさながら自らの尾を食する神話の蛇かのように…… 本稿はその点に触れつつ、WEB小説投稿サイト、引いては私達がインターネットとどう関わるべきか思量したものである。 このエッセイに関して意見や思うところのある方は、ポイントを付与せずコメントを下さってもかまいません。 表紙写真 パックンチョ様 『壊れたスマホの亀裂』 https://www.photo-ac.com/main/detail/1296318?title=壊れたスマホの亀裂&searchId=3054049114
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