「お前が選ばれたのは人数合わせ。だから雑用でもやってろよ」 「整備士あがりで作業人形しかまともに扱えないお前に何ができるっていうんだ? 模擬戦で一度も勝てないくせに」 仲間から彼に投げかけられる辛辣な言葉は事実。 泉は高校時代に受けた思考装置(ソートユニット)との結合演習(リンクテスト)のときの事故のせいで、ひとりで作業人形以上の思考装置との結合を禁じられていた。 そのせいで自分と自作した補助装置で人形を操作せねばならず、どうやっても模擬戦では勝てないのだ。 教官の指示によって事情を明かせない彼は、それでも巨大な戦闘兵器である武装人形(アーマードパペット)を操る人形遣い(パペットマスター)の候補生として、宇宙基地で訓練を続けた。 他の候補生たちが次々に正式な武装人形を与えられ、とうとう泉にもその時がくる。 「武井泉候補生、お前にはこの人形遣いになってもらう」 教官にそう言われ彼は人形へと乗り込んだ。 もしこの人形を使いこなせなければ彼は候補生ではなくなり、修理工としてこの宇宙基地で勤務することになる。 旧式の白の人形は前の人形遣いが現役から退いてから、誰も使いきれないものとして格納庫の奥で眠っていたもの。 トリプルエースの前任者と白の人形は最強の武装人形として今でも知られていた。 「我が名は武井泉。お前を使うものである。命に従え」 彼は人形の思考装置に語りかける。 人形の思考が泉の思考と絡み合う。 ここで拒否されればもう後がなかったが人形は満足したように告げた。 「――仰せのままに。お待ちしていました、マスター」 新たな主人を得て息を吹き返した人形は動き出す……。 無駄な存在として有機生命体である人類の絶滅を目論む無機生命体たちとの闘いへと。