精神栄養学や、睡眠貯金法がポピュラーになった千五百年後の日本。 「精神栄養学」とは、不眠症も含む精神疾患を発症した人の特徴のひとつを改善、新しい学問のことをさす。特定の栄養素が過不足状態になっている人々の食事を見直し、食事療法を中心に指導できる栄養士を大学や短大では育成している。精神栄養学を学んだ栄養士と、不思議な屋台「すいみんやったい」の登場の組み合わせで、不眠症の人々を改善し、各々の「睡眠貯金」を増やしていく。 睡眠不足が社会問題になり、不眠症ゆえに「がん」になりやすい人が多くなった。この時代のがん発症率は年齢や「がんの種類」に関係なく1.5人に1人、がんサバイバー5年生の生存率は30パーセントである。 そこで考え出されたのが「睡眠貯金法」である。「精神衛生法」という法律が制定。この法律の中に「睡眠貯金法」が含まれている。生活は便利になっていくが、睡眠時間が短くなっていった。 「すいみんやったい」では人々の「睡眠時間」を売り買いできる。眠りすぎる人から買い上げた睡眠時間は、睡眠の効果を持つパワーストーンを産む睡眠鳥(すいみんとり)の主食になる。この鳥の好物は、あらゆる生物の眠気や睡眠である。この鳥は突然変異で進化した鳥の総称で、一般的にはマジックバードと呼ばれていた。 睡眠鳥が満腹になると卵を産む。鉱石で固められた小さな卵の中身はマジックストーンの粉末だ。その粉末を練りこんだ商品を永年特許を取った屋台「すいみんやったい」が専門的に取り扱う。屋台とは名ばかりのこの屋台は、大昔に廃業した「温泉付きビジネスホテル」をリフォームして使っている。 入浴後に水分補給をしてから就寝するのだが、その時間の効果は30分から8時間まで様々である。この屋台では、入浴+睡眠が基本のコースだった。代金は手の甲に埋め込まれたマイクロチップで支払う。髪の毛よりも細く小さなマイクロチップには、個人番号とスリーピー・ポイントのみが登録されている。スリーピー・ポイントとは、お金に代わる新しい通貨で、別名「徳ポイント」とも呼ばれ、略称は「sp」と書く。この「すいみんやったい」で働く栄養士のお話。 ※ネタのきっかけはSNSのフォロワー様からいただきました。ありがとうございます。
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