見よ。神が私を殺しても、私は神を待ち望み、なおも、私の道を神の前に主張しよう。(ヨブ記13章15節) 時は16世紀、スペイン王国統治下のオランダ。宗教改革の波はこの地にも及び、ここオランダでは主にカルヴァン派のプロテスタントがスペインに対する独立運動を展開していた。そんな時代の激動の中に、後世に“再洗礼派”の名で呼ばれる人々がいた。彼らはキリスト教のもっとも重要な秘跡の一つである小児洗礼を否定し、成人の洗礼のみが有効であるという主張を唱えたため、カトリック、プロテスタントの両派から激しい弾圧を受け、多くの者たちが虐殺された。 そして、アスペレンのディルク・ヴィレムスという青年もまた、その一人であった。
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