アポロクロック
忍忍
現代/その他ファンタジー
長編
4話
6,830字
2023年2月23日更新
ずっと隠されてきた物語。 語るも罪、記すことすら罪な物語。 あの日、違う道を選んでいたら••••••。 あの日、彼を一人で行かせなければ••••••。 結果は違っていたのかもしれない。 昭和が終わり、平成の時代に入ったばかりの頃。 この国は、人知れず窮地に陥っていた。 権力や財力ではどうにもできない力、純然たる暴力によって。 苦肉の策だった。 断腸の思いで踏み切った策だった。 平和な国の、平和な時間を蝕み続けた者たちへの対抗策。 暴力には、それを超える暴力を以って立ち向かうべし。 貴方は知らない。 嘘で塗り固められた平和の中で、呑気に笑っている。 だがそれでいい。 貴方は知らない。 その嘘を守るために、どれほどの命が注がれたか。 知ればきっと後悔する。 私たちは知らない。 数えきれないほどの人間を殺した殺人鬼が、この国を救っていたことを。 これより語るは、禁忌の物語。 秩序を守る警察内部で秘密裏に行われていた、暴力による断罪。 それを最も深い所で、最も暗い所で支え続けていた殺人鬼の物語。 愛に生きて、愛に生かされた殺人鬼。 力に溺れ、力に生かされた殺人鬼。 人を殺し、人を守り続けた殺人鬼。 彼女は幸せだった。 殺人鬼は満たされていた。 幸せな二人を追いかける恋愛物語だったかもしれない。 悪を追い詰める正義の物語だったかもしれない。 涙を誘う、人情溢れた優しい物語だったかもしれない。 でも、これは違うのだ。 決定的に、致命的に、壊滅的に、自然的に。 この物語は、血で血を洗う憎悪の物語。 復讐に復讐を重ねる、無慈悲の物語。 ハッピーエンドなど存在しない。 伏線も起承転結すらもない。 一人の殺人鬼が、たった一人のために全てを殺し尽くす、支離滅裂な物語。 解錠。 A級小説Lv01
読了目安時間:14分
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