鬼が笑えば物事のあらゆるものが打ち砕かれた。願ったことも、望んだことも、鬼が笑えばその瞬間の物事はけして叶わないものへと変化した。 ほんの些細なことでも、命程大事なものさえも。 鬼を怒らせてはならない、一心で人は生活の糧を手放した。 それは泣くと一帯に雨を降らせる不思議な人間、人は雨に頼って生き繋いでいた。――が、その手段は力尽くで雨を泣かせるということ。鬼は、人に暴力を振るわれていた雨を救ったのだった。 しかし人も考えた。恐怖で縮こまった雨は常に鬼の空に雨を降らせるだろう。二度と晴れることもない空に鬼は笑うこともないだろう。 人は嗤った、遂に鬼を懲らしめられると。 けれど人間の思惑とは違った。 鬼は確かに笑わなくなった。だが鬼が笑わない理由は鬱屈とした空の所為ではない。 自分が笑えば雨の望みを叶えることも出来ない。雨を、悲しませない為にだった。 その日救うと決めたのは、一目で惚れてしまったからだった。 雨の為に鬼は笑わない。 鬼が雨に奪われたのは空ではなく、その心だった―― ……おや、しかしどうも雨くんの様子がおかしい。 もしかして人ではない?待って、そもそも鬼と人じゃ一緒に生きていけない、実例があって現在進行形で傷心の天狗が山に引き篭もってるから。 待って、でも惚れてしまったから、諦めるのは無理だから。好きすぎて無理だから。 鬼くんは雨くんの為に笑わない鬼になると決める。でもどうしたらいいかわからない、知恵を貸して皆。 何者か得体がしれないけどとびきり可愛い雨に恋した不器用で鈍くてなにもかもが足りない鬼らしくない鬼の為、 中途半端な狼 心の傷に閉じ篭もった天狗 通りすがりの偉い狸 同胞を忌み嫌う陰陽師 狐の神様 人の世界から狭間へ落ちた人鬼 意外と仲良しな彼らが力を貸して鬼くんの恋をどうにかするほのぼのゆるーいお話。 ※BOYSFANコン参加、お題フリー ※ゆっくりめの更新になります ※暗 く な い B L ※ほのぼのBL
読了目安時間:3時間8分
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