『通りゃんせ 通りゃんせ 千本巡る御霊よ 其方の御魂は此方に見やぬ 此方の御魂は其方に見やる 振り向く面には このえの狐 通りゃんせ 通りゃんせ 千本巡る御霊よ』 風の凪ぐ、満月の夜。 『水鏡ノ日』に、少年は妖怪の住まう世界、《妖界》へと旅立つ。 それは少年にとって、何度もやっているただの遊び。ただ、それだけのはずだった—— 少年が六つを迎えた日、妖界は未曾有の危機を迎える。 予想されていた時より何年も早い悪鬼の長、酒呑童子の目覚めにより、少年は死に繋がる程の大きな怪我を負ってしまう。 少年は巫女の力を受け入れ傷を治したが、そのために『半妖』となってしまったことで、元の世界へと帰ることが出来なくなってしまった。 気を落としつつも命あることに感謝する少年だったが、ある時、 『千年の節目に行われる巡礼——その年、私は鏡の世界から日本へと降り立ち、土地に根付いた千年分の信仰を集めることで、多くの妖力を得ます。その時であれば、貴方を元の姿へ戻し、そして現実の世界へとお連れすることも叶いましょう』 九尾の巫女の話に、少年は十年の時を幽世で過ごす…… 『今度は助けてもらうんじゃなくて、助けてあげられる人間になろう』 そうした決意と修行に費やした十年の後。 少年は巫女の護衛役として、一年を通して行われる『千年巡礼』へと加わることとなった。
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