ルチアは病弱なふたごの兄ルークに成り代わり、勇者として過ごすことを選んだ。 表向きには病弱な令嬢ルチアとして屋敷に引きこもり、その実、勇者として全身鎧をまとい姿形を隠してひたすら剣を振るう日々。病弱ながらもやさしい兄や心から案じてくれる両親、そして数人の使用人に助けられながらルチアは勇者として戦った。 少女だったルチアも四十歳になる年、ついに勇者は代替わりを迎え、これからは領地の屋敷にこもって静かに余生を過ごそうと思っていたルチアだったが、周りがそれを許さない。 騎士団の副団長として長年ともに戦ってきたオーウェン・ロペスは、情熱的な赤い瞳でルチアを射抜く。 「あんたの背中を守りたい。だめか?」 王弟であり現宰相でもあるウィリアム・クラークは、勇者のファンだと言いルチアこそが勇者として戦ってきたその人だと見いたうえで微笑みかけた。 「どうか私の妻として、生涯そばにいていただけませんか。これは王族としてではなく、私個人の願いです」 商人のロバート・ブラウンは、妖艶に笑ったかと思えば快活な笑みを見せルチアを翻弄する。 「僕とふたりで、世界を旅しない? あなたとなら、どんなところでも最高の気分になれると思うんだ」 心が揺れ動き、誰の手を取るべきか悩んでいたとき。 三人の男たちだけでなく、長年そばにいたノアからも思わぬ告白を受けて……? 遅くやってきた春に、男性経験のないルチアはたじたじ。 ルチアの思い描いていた静かな余生は一体どこへ!? 小説家になろうにて「ワケアリ不惑女の新恋」企画参加作品。
読了目安時間:1時間40分
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