東雲志乃(しののめしの)は死にたかった。裏切りと暴力と罵倒の果て、自己否定から来る自殺衝動を止めることが出来なかった。 手首から滴る赤。明滅する視界。そして暗転。絶対の終焉が眼前に口を開いたのであった。 しかし、終わりが訪れることはなかった。網膜を灼く閃光と共に、突如として一人の青年が虚空から姿を現したのである。 全裸で。 完膚なきまでのすっぽんぽんであった。威風堂々としたフル・モンティである。 彼こそ、過去に人類へ闘いを挑み、ヒト科動物に恐怖を刻み込んだ鏖殺の暴帝、『龍王ヴァルドレッド』であった。 五百年の封印から解き放たれた龍王は、凄絶な笑みを浮かべ、紅蓮の瞳で志乃を見据え、口を開く。全裸で。 「召喚を賜り光栄に思う、我が主殿! 只今より俺が貴女の絶対の肯定者、遍く全てから護り包み込んで見せよう!!」 「変態だー!!!! 前隠して前!! 先にアンタの股間を護って包みなさいよ!? うわぁぶらぶらしてるうぅぅぅぅ!!!!」 かくして、少女と龍王の奇妙な生活の幕が上がる。 「相分かった! 先ずは主殿を貶めた主犯とその取り巻きに報復と参ろうか。下剤飲ませるとかどうであろう? 糞が糞まみれになる様はさぞや痛快であろうとも!!」 「お願いだから龍王っぽいことしてくれない? 不思議パワーでずどーんとかない訳?」 そして動き出すのは、ヒトに仇なす異形を滅殺する異端の狩人。 「鏖殺の暴帝、白銀色の死、生きる厄災……龍王ヴァルドレッド、貴方は存在してはいけない。召喚者共々、ここで僕が殺します」 「貴殿……線が細いな。ちゃんと飯食ってるか」 「緊張感を明後日に向かって全力投球しないで!」 デッドオアアライブ、二人の明日はどっちだ!? 暗いのは最初だけで真面目にやる気など毛頭ない、異能異種格闘系現代バトルファンタジー!
読了目安時間:50分
この作品を読む