病の神様
鳴尾
現代/その他ファンタジー
長編
12話
29,260字
2022年1月17日更新
ー神様に祈りを捧げると、どんな病も治るらしいー くだらない。神を信じたことはない。 でももし神が本当にいるなら、俺は間違いなく神に嫌われている。 家から車で一時間。そこからさらに山の中腹まで登ったところに、その神社はあるらしい。その神社にひとりで行って、自身の病を打ち明ければ、神様が現れてどんな病でも治してくれる。 どこの三文小説家が書いたのか、そんな都合のいい神様があってたまるかというのが、話を聞いた幸が最初に思ったことだった。 この山には神様がいる。自分の病を治してくれる神が。 山の中腹にある神社でお参りをするときに、五円玉を三枚入れて自分の病を告白すれば、その病を治してくれるのだ。そしてお参りには、必ず自分で行かなければならないらしい。 ネットで調べてもその神様の情報も、神社の情報も全く出てこない。 でも確かに、その神社はあるらしい。 幸は生きることに疲れていた。 現実を教えずに楽観的なことばかり言ってくる医者が嫌いだ。なんてことない顔していつも助けてくれる親友が嫌いだ。そして何より助けられてばかりで何もできない自分自身がいちばん嫌いだ。周りからどんどん遅れていく劣等感で、おかしくなってしまいそうになる。幸は次第に悲観的になっていった。 また、病は確実に、幸の体を蝕んでいった。 病院でたくさんの管に繋がれて、生きながらえていることに、幸は意味を見出せずに何度も病院を抜け出した。 そんな幸を見かねて、親友の大地は幸をあちこちへと連れ回すようになった。
読了目安時間:59分
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