歯科技工士の裕子にはかつて頼れる先輩、ソラがいた。だがソラはある日、心身を壊し職場からも裕子の前からも姿を消してしまう。12年後、ソラと同様に壊れかけていた裕子のスマホにメッセージが届く。それはソラからだった。ソラはいま北海道で害獣駆除のハンターをしているという。灰色の日常を変えられるかもしれない、なによりもソラに会いたいという一心から、裕子は見学させてもらえないかと頼む。ソラは快諾する。ソラはただのハンターではなく、それによって利益をあげる持続可能なビジネスモデルを築き上げる起業家となっていた。ソラは、本当はもっと会社が軌道に乗ってから、あらためて誘うから、もうすこしだけ待っていてくれないかと言う。だが裕子は、ソラと一緒に苦労がしたいと申し出る。今度は後輩としてではなく、ともに歩んで会社という「子供」を育てるソラのパートナーになりたかったのだ。ソラも了承する。12年の時を経て、ふたりはようやく隣を歩く相手を見つけたのである。
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