地球は太平洋の海底火山噴火で、未曾有の危機に陥っていた。 噴煙は世界の空を全て覆い尽くし、地表は明けることのない暗闇に包まれた。地表に堆く積もった火山灰で植物は枯れ、濁った海は澱み、生き物はその殆どが息絶えた。 そんな中でも人間たちは生き残っていた。 人間が取った手段は二つ。 地下に潜ってそこに巨大な地下都市を築き、来る地球の自浄能力を期待して長い暗闇に耐えるか、新天地を目指して広大な宇宙に飛び出すか。 地球を見捨てられない大半の国の人間が、地下に潜って長い冬を耐える道を模索した。 僕が選んだのは地球を脱出し、移植可能な星を探して世代を重ねて宇宙を旅する道だった。 その日は、移民船『方舟』に日本の移民艦が積載される日だった。 移民ではなく船員として方舟に向かった僕は、そこで不思議な事件に巻き込まれた。港に移動するためのバスに乗った僕は、突然感じた目眩にバスの床に倒れかけた。 顔を上げたときに走る車窓に見えたのは、緑に茂った街路樹だった。そのまま突如として暴走した無人バスが、壁に衝突した。吹き飛ぶ僕に、横転したバスが滑りながらその先に立ち尽くしていた人影に『突き破られた』。 交錯する視線。 意識を失う瞬間に見えたのは、目を見開いて驚いた顔をしている、幼馴染のミモザの顔だった。 そうして僕の冒険は、気絶から始まった。
読了目安時間:34分
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