何の前触れもなく、地球は世界地図をハサミでバラバラに切り裂かれるように、いくつもの「事象面」へと分断された。 それぞれの国と地域が断絶し、一般人には行き来不能となってしまった世界。 時期を同じくして、並行する異世界から移民が流入してくる。 もとの地球の住人達は世界をふたたび合一しようと異世界民と力をあわせ、この現象を探るべく探査機関を各国で立ち上げた。 本国の場合で言えば、それが「探査院」であり、実際に未知の扉に挑むのが「航界士」と呼ばれる命知らずな一群である。 そんな損耗率も激しい航界士の補充のため航界士修錬校が創設され、少年・少女候補生が、将来の航界士たるべく鍛錬を重ねている。その候補生の一人である主人公は、未熟ではあるが先輩たちの助けをかり、迷いつつも成長してゆく。 だが――訓練を重ねるうち、彼はこの社会の構造を形づくる歪みに気づきはじめる。 ――思惑。 ――陰謀。 ――欲望。 おりしも、彼の周囲にナゾの圧力が。 そしてひそかに接近する雌豹を思わせる不思議な美少女。 幾多の試練を経て、ついに彼は移民たちの女王の御前で開催される勅任航界士の試験に望む。しかし試験空域は事象震が荒れ狂う地獄の底となり、耀腕によって受験者は次々と殉職してゆく。 恐怖と後悔が充ちる順番待ちの広間。 はたして彼は、航界士になるという選択をとるのか? ……などと大層なものじゃ御座いませんが、御用とお急ぎでない方は、是非。
読了目安時間:6時間26分
この作品を読む