大和三姉妹は街の秩序を守る魔女である。 人心掌握・肉体強化・意識誘導・運命操作・未来予知……魔女の持つ魔法の力は、その者の力量によって多岐に渡るとされている。 魔女は人々が知らずのうちに自然と垂れ流している魔力をもって、それらの不思議な力を得るのだが、ひとつだけ大きな問題を抱えていた。 『魔女から長年魔力を奪われてきた『童貞』は、三十歳の誕生日に魔法使いになる』というもの。 搾取され続けた童貞の人生は一転攻勢。 ヒエラルキー的に下の辺りからジャンプアップである。 これまでの社会構造が一夜にして変貌を遂げるという、案外洒落の通じない状態。 そう、童貞の管理は魔女にとっての死活問題なのであった。 故に魔女協会は、二つのルールを定めた。 ① 魔女は自らが魔力供給を受けている童貞について、魔法使いとならぬよう頃合いを見て、責任をもって『処理』すること ② 魔女は他の魔女が魔力供給を受けている童貞について魔法使いとならぬよう協力して『処理』すること だがしかし、魔法の存在を知った人の世の権力者たちは魔法使いの力を利用することで、世界を我がものにしようと画策し、歴史の時々において魔女とのいざこざを繰り返してきた。 世にいう『魔女狩り』である。 閑話休題 そんな世界の覇権なんてものは一市民として過ごす彼女たちにはほぼ関係がなかった。 大和三姉妹は、幼馴染にして三姉妹の住むアパートの大家である大矢直継を、まさに魔力の源としていたのであるが、なんやかんやあってボチボチ魔法使い化が始まりそうな具合の、いい年齢に差し掛かっているのであった。
読了目安時間:2時間38分
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