俺は異性を愛することがなかった。ヒカルは異性に興味を持てなくなっていた。 学生アパートの一室に無理やり住み込むことになった俺たち二人は、住民や兄弟の助けがあって、人生の再スタートを目指していた。 なんせ俺たちは二人とも病んでしまったから。飛び降りようとしたビルの上で出会った二人は、なんとか死ぬのを思い留まった。 それから、調子のいい時悪い時、俺たち二人は支え合って生きていくことに決めたんだ。 それでも人生は簡単ではないし、愛だってそんなわかりやすいものじゃない。 ヒカルにこう尋ねてみた。 「キスしてみるか」と。 ヒカルは首を横に振って、こう答えたんだ。 「必要ならするけれど、私たちには必要がないからしない」って。 あれは、少なくとも俺を愛していたから言った言葉なんだろう? 性別を超えて、俺を愛していてくれたから。 第23回電撃大賞四次選考落選作品であり、第二回アルファポリスライト文芸大賞奨励賞受賞作品、小さなアパートの一室で繰り広げられる日常を描いた作品、「アパートの一室」をリメイク。 悲しい時、辛い時、この作品がきっとあなたの心を安らがせることを願って。
読了目安時間:2時間39分
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