温暖化による水温上昇によって迎えた大洪水時代 環境が悪化していく一方、AIや遺伝子編集技術などテクノロジーの発展により人間の暮らしは限りない利便性を手に入れていた。 歴史的な洪水によって被災した一人の少女瑠子は、被害をもたらした人間中心主義の社会に疑問を抱き、人類の自然回帰を望むようになる。 被災経験によって独自の価値観を抱くようになった瑠子は批難先でいじめにあい、自ら命を絶つ。 ネットに書き溜められた遺書は、信者たちによって加筆修正され続け、一つの神話体系を作りながら拡散していく。 瑠子の死後から10年。 シンギュラリティを迎え、人類は心の衛生環境までAIに評価される時代。洪水被害対策として空中浮遊都市の建造が開始され、そこに住まう人間は“優れた遺伝子”を手にした富裕層のみ。 社会の底辺に追いやられた人々は、瑠子が残し、ネット上で加筆修正され成長し続ける神話に感化され、“文明のやり直し”という名の下に反社会的な新興宗教団体を築き上げてあちこちでテロを行うようになる。 司法はテロを行った犯罪者をAIの精神鑑定で自動的に“障害者”に分類するようになるため、テロの背後にある宗教の存在に気付けないまま、不可解な連続テロ事件の後処理に追われる。 学生時代、いじめられてる瑠子を救えなかった碧は、ネットで同じように孤立している人間を見つけては居場所を提供して救う活動をしているうちに、テロの背後にある宗教と、その教義がかつて自殺した友人の思想であることに気付き、一人で止めようとするが……。
読了目安時間:58分
この作品を読む