改題 春草→春草―しゅんそう―→つきが世界を照らすまで~春草伝え話~→つきが世界を照らすまで ▽▽▽▽▽ 明治二十二年、ひとりの少年が東京美術学校に入学するために上京する。 「私は総領だから、お前が代わりに画家になってくれたら嬉しいんだが」 兄、為吉(ためきち)の思いを胸に、彼は美術学校で日本画の教育を受けることになる。 そこには横山大観(よこやまたいかん)や下村観山(しもむらかんざん)など、後に日本画の大家と呼ばれるようになる人が多くいた。 岡倉天心(おかくらてんしん)を始め名だたる指導者の元、彼らは切磋琢磨し成長していく。 「面白い絵が描けると思うんだ。今考えてるのを描けたらすごいことになるよ」 彼の作品は出品するごとに議論を巻き起こす。 それは岡倉天心の「光や空気を描く方法はないか」という問いに答えるために考え出されたものだった。 伝統的な絵画の手法から一歩飛び出したような絵画技術。 しっとりとした情景を思わせるぼかしの技法、琳派に傾倒した装飾的な絵画、線ではなく色を主体とした手法。 革新的であるゆえに、それは常に酷評に晒された。 それでも常に一歩先の表現を追い求め、芸術を突き詰める彼の姿勢は終生変わることがない。 その短い人生ゆえに、成熟することがない「不熟の天才」と呼ばれた彼の歩んだ道は決して楽ではなかっただろう。 その人は名を菱田春草(ひしだしゅんそう)という。 ▽▽▽▽▽ 各話の後書きを脚注で使用しています。 読まなくても問題ありません。 ▽▽▽▽▽ 本文の右上「Aa設定」から縦組みを設定してくださると読みやすいかもしれません。 お好みですが、よろしければお試しください。 ▽▽▽▽▽ 参考文献 本文末に掲載します。 ▽▽▽▽▽ カワウソうーたん様に表紙を作っていただきました。 ▽▽▽▽▽ 夜見ベルノ様、如何屋サイと様、早乙女宵様に読書実況していただきました。
読了目安時間:3時間58分
この作品を読む