悪女として処刑されたエリザベートが目を覚ますと、小鳥の聖獣として生まれ変わっていた。 歴史に名が残る者が未練を残して死んだ場合、聖獣として生まれ変わる世界。 聖人だった聖獣が多い中、エリザベートは「エリー」と名乗り、生前のことを覚えていない聖獣として生きていく決意を固める。そんな聖獣としての暮らしに慣れようとしているエリーに城内を案内しようと手を差し出したのは、エリザベートが暗殺しようとしていた現国王――生前の婚約者・プラティオスだった。彼に連れられ城内を巡っていると、狼の聖獣に連れられたエリザベートの妹・エリアーナと再会してしまう。思わぬ出会いに戸惑っていると、魔獣の叫び声が廊下に響き渡る。無我夢中で聖獣の力を使ったエリーに、狼の聖獣は「お前、記憶失ってないだろ」と告げる。 これを機に、エリーは聖獣から腫れ物扱いされていた狼の聖獣・ルーピンと親しくなる。ルーピンは生前、多くの無実の人々を殺めたとして処刑された悪辣将軍だった。だが史実は事実ではないことを知っているエリーは、ルーピンを悪人ではないと思う。 聖獣として目覚めた翌日の夜、エリーが聖獣の部屋で眠っていると、侍女にどこかへ連れ去られてしまう。侍女はプラティオスから特別な眼差しを向けられているエリーに嫉妬心を抱き、手に掛けようとしていた。支離滅裂な言葉を並べる侍女の手の中、エリーがどこまでも届く声をあげる。その声を拾い、エリーの窮地を救ったのは、ルーピンだった。 聖獣達やルーピンとの仲が深まったある日、無実の村人を皆殺しにしたという青年が取り立てられる。エリーとルーピンは、なにも言わず死罪を受け入れようとしていた青年の真実を明らかにすることに。 この事件について調べていくうちに、二匹はそれぞれの過去と秘密、聖獣と魔獣の関係、そして世界の真実へ、辿り着く。 *この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。あくまでファンタジーとしてお楽しみください。
読了目安時間:2時間57分
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