『この街で神を否定した者には必ず天罰が下る。生き残るために祈りましょう。』 神に対する信仰が深い『メヘルブ』と呼ばれる辺境の麓街。 そこは戦争も政治もない平穏な環境であり、住人の誰もが神に感謝と安寧の祈りを捧げることを習慣としていた。 その街の教会で司教が亡くなった。 代わりに新たな司教としてメヘルブへ招かれた主役は、その街の正門まで来ると、ここに至るまでの道程の記憶が無くなっていることに気が付く。 その先で出会うシスター・マイアに名前を聞かれるが何も答えられず、これでは生まれたばかりの赤子同然だと自信を喪失したまま教会へ招かれるのだった。 その先で彼を待ち受けるものとは……。 後に『カイル』と名付けられる主役の彼。 謎多い4人のシスター……マイア、オルカ、クウラ、ヤエ。 教会に暮らす子供たち。 敬虔で善良な住人たち。 そして…。 何も知らないカイルが穏便に職務を全うするには、あまりにも多くのことが詰んでいた。 なぜなら、このメヘルブには神を否定した者は誰であれ必ず天罰が下るという掟があるからだ。 たとえ子供であろうと平等に死よりも酷い生き地獄に遭わされる。 皆はただその恐怖に怯え、赦しを乞うよう懸命に信仰を続けてきただけなのだ。 何も知らず、出来心で神を疑っただけの子供が罰を受けて自決する結果になったとしても、この街では仕方のないことなのだ…。 外から来たカイルはその異常さに幾度となく翻弄され、果てには好意を抱いていたはずの女性すらも忌み嫌い、貶すことになる。 何故、この街にはこのような掟があるのか。 何故、彼は全てを失っているのか。 全ては神だけが知っている。
読了目安時間:3時間19分
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