重さも熱も持たない、混沌と呼ばれる液体に満ちたこの海には、無数の世界が散りばめられている。 物理科学が発達し、混沌を渡る船を生んだ世界。その科学の前身とされた錬金術が、独自の理論のまま発達した世界。 物理科学世界が、進歩の限界と見切りを付けた蒸気機関が発展し、高度な文明を築いた世界。生体工学と機械工学を融和させ、人体へ機械を繋ぎ合わせる技術を確立した世界。 あるいは魔法や呪いが席巻し、はたまた超能力や気功が術理として知られる世界。 もちろん、その世界を統べる人類種もまた、皆一様に同じカタチをしているとは限らない。 生まれた時から鋼の身体を有する者、獣の特徴を備える者。常理を超えて永い時を生きる者、死のない者。そもそも肉体を持たず、意識のみで生きる者。 その全容を知る者は居ない。 唯一、その身一つで混沌の海を泳ぎ渡り、世界の種を蒔く、ゼリーフィッシュを除いては。 ※読み切り的な作品です。
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