エルキュール・ラングレーには誰にも言えない秘密があった。 ヒトとは異なり食事を必要としないこと。ヒトとは異なりその身体に血が通っていないこと。 エルキュールはヒトではなかった。古き時代からヒトに仇なし、世界の秩序を乱す、魔人と呼ばれ忌み嫌われる種族であった。 彼の唯一の理解者だったのは、人間として生を受けた家族のみ。幸か不幸か彼女たちに拾われ、母と妹と共に生きてきた。彼が自己を自覚する以前から、ずっと。 その生活は苦難に溢れていた。一度エルキュールが魔人であることが知れ、結果として彼は家族の故郷を奪った。それから二度と過ちを繰り返さぬよう、彼は自らを閉じ込め続けた。 自罰の末、次第に家族にすら壁を感じるようになって来た頃、エルキュールに転機が訪れた。家族と共に移り住んだ街は魔獣の襲撃にあった。そしてその騒動を手引きしたのは、エルキュールと同じ魔人によって構成された反社会集団「アマルティア」であることが発覚し。 自らが混沌の運命から逃れられないと悟ったエルキュールは、一方的に家族と別れ、アマルティアと戦う道を選んだ。その旅は孤独に満ちたものであるはずだった。 エルキュールの意志に反し、同じくアマルティア打倒を掲げる同士があった。 飄々とした赤髪の男剣士グレン。陽だまりのように温かく、魔法が得意な少女ジェナ。毒舌でクールな性格であるシスターのロレッタ。 一度は全ての絆を断ったエルキュールの周りは、戦いへの道を進むほどに眩く照らされていき。 ――これは魔人であるエルキュールが紡ぐ、救済と救世の物語。 ◇◇小説家になろう様・カクヨム様にて同時掲載しております◇◇
読了目安時間:16時間23分
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