ネタバレ注意! 19世紀末のフランス、ブルターニュ地方。フィニステール〈最果ての地〉と呼ばれる地の寄宿学校に、季節外れの入学生がやってきた。 彼の名はリュシアン・ド・ラ・モット。名門ラ・モット伯爵家のひとり息子であり、儚げな美貌を持つ15歳の少年である。 権力を愛する寮長のヴィクトル、情報屋の副寮長のモーリスは、リュシアンの浮世離れした美貌を危惧し、〈不良伯爵〉として下級生に恐れられる17歳のジャン=ジャック・ド・モンフォールとリュシアンを同部屋にする。 3人は後輩のリュシアンを温かく見守っていくが、バカンスがはじまる直前、ついに事件が起きた。 同級生らがリュシアンを酩酊状態にし、無理やりドレスを着せようとしたのだ。ジャンはリュシアンを介抱する途中、その身体に「鞭の痕」を目撃してしまう。 あるときリュシアンに手紙が届く。差出人はアルベールという名の男。リュシアンはその手紙をジャンに隠そうとする。 ジャンはヴィクトルから、リュシアンは前々からジャンを好きだったと聞かされる。自分の気持ちに向き合ったジャンは、夏の夕立の中リュシアンに想いを伝え、ふたりはめでたく両思いとなる。 ジャンはモーリスにリュシアンの身辺調査を依頼する。その結果、アルベールはリュシアンの元家庭教師であり、ふたりは恋人同士だったことが判明する。 だがそれが父のラ・モット伯爵に露見し、アルベールは解雇、再就職先を妨害され、リュシアンは折檻を受けた上、この学校に入れられたのだった。 クリスマス、ジャンが実家へ帰省している間、ラ・モット伯爵が前触れもなく学院にやって来る。 リュシアンは、自分を退学させ家に連れ帰ろうとするラ・モット伯爵に歯向かうが、怒り狂う伯爵から暴行を受ける。 リュシアンはラ・モット伯爵をナイフで刺し、最果ての岬へと逃亡する。 学院へと舞い戻ったジャンは、荒れる岬に佇むリュシアンを見つけ出す。 「ーー僕を救うつもりなら、いますぐこの手を離して」 そう言うリュシアンをジャンは抱きしめる。 「簡単じゃなくても頑張ってみるって言っただろ。だから最後まで頑張らせて」 ふたりはその足でパリへ逃亡する。 5年後、ふたりはパリのアパルトマンで新生活を送っていた。これまでの身分も名前も捨て、その街でつましくも幸福な人生を手に入れる。
読了目安時間:1時間11分
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