最強VS無敵。勇者対魔王、至聖×極悪。 鳥も通わぬ絶海の孤島。その煙たなびく最高峰の奥深く。地下迷宮の最下層が轟き激しく明滅していた。 邪教団テクノトロンの総本山。スルメッシュ寺院の大礼拝堂である。 そこで神聖に至りし者と極悪の権化が火花を散らしていた。 正義とは真っすぐで純朴で人のためにある究極の福祉である。それぞれがかけがえのないものを護るため互いに一歩、いや微塵たりとも譲らず最終決戦開始から三日と十八時間二十三分。未だに決着はついていない。 しかし、いつ終わるとも知れない戦いに両者は疲労の色を濃くしている。 「むぅ…」 大神官大魔王《トルクルイス》が片膝をついた。手持ちの呪文を使い尽くしたのだ。だが彼には汲めども尽きぬ魔力が備わっていた。呪文のパワーをリロードする間は敵と互角以上に戦える眷属に任せようとした。まずは地獄の蛇王を召喚せんとローブから水筒を取り出し唇を邪水で潤した。 その時だった。 まばゆい光がトルクルイスの視覚を奪った。 「ぬぉっ!?」 目にもとまらぬコンボが魔王に畳みかける。 モーガン・フーリガンパンチ! モーガン・フーリガンキック! モーガン・フーリガンボンバー! とどめはモーガン・フーリガンビーム! 「そ、その技はッ!?」 色褪せた情景がハイレゾで蘇る。勇者モーガン・フーリガンがまだ駆け出しのころ必死に繰り出した蟷螂の斧であった。 「ええい、効かぬ。膏薬ほどにも効かぬわ」 魔王に一蹴されるたびに涙目で逃げ帰ってしまう。 そんな勇者をどこか可愛いと思いながら無慈悲に打ちのめした。 血気盛んな若者は趣向を凝らした捨て台詞で楽しませてくれたのだが…
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