――欠けた魂は己が半身を求めて響き合う。暗闇の中を、その声を頼りにここまできた。悠久の時、果てしない旅路を。 「俺の名前は上月雄大。中学二年生。どうやら一度、よく分からないうちに死んでしまったみたいです」 ある日、雄大は命に関わる怪我を負った、はずだった。 それなのに、何事もなかったように日常生活に復帰したことを皆が不思議に思っている。 医者も首を傾げていたが、彼自身にだって分からない。なにせ、記憶が飛んでいる。 なぜ、自分が血まみれで倒れていたのか。誰にやられたか見ていないのか。 色々な人に尋ねられた。 そんなこと、雄大自身が誰かに聞きたかったのに、どこにも答えはない。 そんな釈然としない気持ちを抱いて、久々の学校生活を過ごした帰り道。 「上月ユータ様、ですね?」 彼は一人の少女と出会う。透き通るような白い肌に、朱く輝く瞳。 真っ白な衣に身を包んだ彼女は、一切表情を変えることなく坂の下にいる雄大を静かに見下ろしていた。 彼女の名はリィナ。 白の少女は雄大を誘う。 かつて存在した魔術師が残した最後の秘術。その儀式が引き起こす戦い。 そんな日常から外れた明日へと。 ☆登場人物紹介はこちら→https://gensoryoki.blogspot.com/2020/11/blog-post_24.html