パンガムは木造立体都市である。木造建築が積み木のように積み上がり、ほとんど立方体に都市ができあがっていることからそう呼ばれている。三百メートルを超える巨大な正断層の壁を補助にして都市は発展した。立方体に……と書いたが崖に寄りかかるように育ったので、遠い西から見れば立方体に見えなくもないが、東から見るとお椀型に見えるかもしれない。 さて都市の風景はというと実に雑多で言い表すことができない。家々ががちゃがちゃと積み重なっているのだが、その成り立ちはこの上ないほどに無計画。もう百棟は積み重なったような家の塔が数百と立ち並んで、その後、交通のいいようにとそこら中に思い立った者から自由に橋をかけて行ったから、今では納豆の中のように、縦横上下に空中回廊が塔を繋いでいる。 全体にかけて、つごう三階、政府の作った全体階層がある。これらを地面から数えて、地面、一階、二階、三階、と簡単に呼ぶ。 パンガムには全てがあると言われている。人の想像しうる限りのものとそれ以上のものがここにはひしめき合っている。 そして無数の(考え方の異なり、欲する物のすれ違う)人たちが住む。どこまで行ってもバラバラな人たちが。
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