幼い頃から母と二人だけで生活してきた主人公、立花蒼空(たちばなそら)。持病があるにもかかわらず日々頑張る母のことが、蒼空はとても大好きだった。しかし、蒼空の高校入学が決定したその日、母は病気が原因で亡くなってしまう。 高校入学後も母を失った悲しみに支配され続ける蒼空。そんな彼の前に現れたのは、一人の少女。黒髪短髪。少々たれ目。透き通るような白い肌。男物のパーカーとジーパンに身を包んだ彼女は、蒼空に向かってこう告げた。 「初めまして。突然だけど将棋しない?」 彼女は、将棋が好きな母の友人。しかし、ただの人ではない。その正体は、なんと天狗。 「テンちゃん……」 「私のこと、知ってるんだ。君のお母さんから聞いたの?」 「本当に……テンちゃん……ですか?」 「そうだけど」 交わされる会話。そして始まる二人の将棋。その行きつく結末とは……。 「私の目の前には君がいて、私がどんな手を指しても君はそれに返事をくれる。絶対に相手を一人になんてしない。これって、本当に楽しいよね」
読了目安時間:3時間21分
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