ある異世界の物語。 その世界に住む人々は、あらゆる元素を司る精霊と共存し生活をしていた。 数多ある国の一つ“白の国”に、フィオナというそれはそれは美しいお姫様が住んでいた。 美貌の少女、と言えば聞こえはいいが彼女は、王子の恰好をし、剣や乗馬を好み、勇ましい戦士が活躍する冒険譚に憧れる“おてんば姫”であった。 そんな日々を過ごしていたフィオナ姫にはある悩みがあった。 『十五歳を迎えたら、同盟国の王子と結婚せよ』 産まれた瞬間から決められていた許嫁との結婚を不服としていたが抗う術もなく、15歳の誕生日が刻一刻と迫っていた。 誕生日の三日前、いつものように苦手な刺繍の授業をサボタージュしたフィオナは、街で出会った翡翠色の瞳を持つ黒猫と出会い、路地裏へ導かれる。 そこには一人の青年が倒れていた。 彼の名前は“キキ”。 キキは世界を旅する“魔法使い”だった。 幼い頃から何故か魔法が使えなかったフィオナは、彼を尊信し、彼の話す“世界”に胸を馳せ、想いを募らせていく。 しかし、彼女の誕生を祝う“晩餐会”で事件が起こる。 父である“白の国”国王に何者かが毒を盛ったのだ。 一命は取り留めたものの、誰と話すことも出来ずただ床に伏せ、王としての責務を果たすことが出来ない重篤な状態となってしまった。 そこで王位継承権第一位である義兄・エドワードが王の代理として王政を執り行うことになる。しかし、義兄は、憔悴し悲しみの渦中にいるフィオナに対し追い打ちをかけるように『国王暗殺未遂』の嫌疑をかけた。 投獄されたフィオナは、あれよあれよという間に死刑判決を下されてしまう。 絶望するフィオナを助け出したのは、焔を吐き、操る一匹の龍であった。 “炎の化身”“万物の王”と人々から畏怖の対象になっていた伝説上の生き物は、なんと魔法使い・キキだった! この物語は、温室育ちのお姫様からお尋ね者になった少女・フィオナは、龍に変化する魔法使いの青年・キキと旅をし“世界”と“総ての真実”を知るための冒険譚である!