ある日、代書人を表稼業とする女魔術師ティアナ・ヒルデブラントのもとに、巨狼フェンリルの転性魔法で男性化してしまったというイルマが、刀剣鍛冶カミルに連れられてやってくる。彼女にかけられた転性魔法を無効化するために、捕縛されているフェンリルを魔法の紐から開放してほしいとの相談だ。しかし、そんなことをすれば、世界に災いを及ぼすことになる。 事情を訊くとイルマは、軍神テュールからアースガルズ王国の軍事力盛衰に関わる重大な依頼を請けていると言う。それは、フェンリルに噛みちぎられた軍神の右手を、数ヶ月内に修復してほしいという内容だ。しかし、右手の修復には彼女自身の乙女の血が必要とされるから、男性化している状態では軍神テュールの右手を編むことができない。もし編めなければ、王国軍の戦闘力が低下することは必至だ。 さらに、イルマの祖父ギュンター・カーマンからもたらされた情報によると、男性化魔法を含めたイルマに対する一連の仕打ちには、邪神ロキが関わっているらしいと言うのだ。ロキの狙いはかねてより因縁のあったテュールに対する意趣返しであり、アースガルズ軍の衰退どころではなく、王国そのものの滅亡だと言う。 アースガルズ王国の滅亡を指をくわえて見ている訳にはいかない。さりとて、魔法の紐から開放されることと引き換えにイルマを女の姿に戻すと言う巨狼フェンリルの言葉は信用しがたい。仮に信じたとしても凶暴な巨浪フェンリルを開放することは危険極まりない行為だ。 ティアナは悩んだ末、ある作戦を思いつく。 そして……。 黒魔術師ティアナ、刀剣鍛冶カミル、少女剣士イルマ、居酒屋亭主ヒュフナー、白魔術師シュヴェスタ・ローザ、山羊飼いアルベルト、そしてエルフェンのアルビーナ……。一行7人による『6つの魔術書』探しの旅が始まる。 表紙イラスト:あぷふぇる(@tsumibitonoA)様 ※この作品に登場する国名や地名・団体・個人を表す名称、その他の呼称等、および政治・経済・文化・風俗、時代背景等はすべて架空のものです。 ※作品内に二十歳未満の飲酒シーンがありますが、物語上は合法の設定であり、未成年の飲酒や法令違反を推奨するものではありません。 ※この作品は「小説家になろう」サイトでも公開しています。
読了目安時間:3時間15分
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