娼館の前に捨てられていた赤子は、館の主人に拾われた。 幼き頃は雑用をこなしていたが、十一になると娼婦として歩み出す。 彼女にとってそれは“普通”のことであり、哀しむことでも、怨むことでもなかった。 彼女の世界は、娼館が全て。 親切な先輩娼婦、気兼ねなく会話出来る友人に囲まれ、美味な菓子も口にできる。 綺麗な布に身を包み、上品な香りの石鹸で身体と髪を洗い、皆で楽しく食事を作り、温かな毛布で眠りにつく。 それが、普通だと思っていた。 食事もままならず、雨風をしのぐ家すらない人々がいることを知り、自分は恵まれていることを悟った。 しかし。 現状が嫌なわけではない、けれど、何か釈然としない日々を過ごしていた。 そんな彼女は、唄が好きだった。 海に向かって一人きり、紡いだ言葉で音を奏でる。 訪れた転機は、幸か不幸か。 ※娼婦が幸せになる話ではありませんので、ご注意ください。 現在公開している本編『DESTINY』の、サイドストーリー(主人公違い)になります。 よって、最終回のネタバレを含みますのでご注意ください。 ※別サイトでも連載していましたが、こちらが完全版(完結版)です。 ※自作の絵以外に、FAで頂いた絵も挿絵として使用しています。無断転載・自作発言等、見る以外の行為は禁止致します。 ※サブタイトル前の■は、挿絵有を指します。 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
読了目安時間:8時間57分
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