一日が二十四時間ではないと識っているのは、どれだけの人数だろう。 世界が黄昏刻に染まる時――その時間は始まる。 闇に潜み、襲い、喰らう存在が跳梁跋扈する世界。 そんな中を駆け巡り、刃を振るい、人知れず戦う存在がいた――その者達の名は退禍師。 これは、そんな人々を影から護る存在を目指す、退禍師の雛鳥たちの物語だ。 雛鳥である少年--日暮れんは、退禍師を目指すため、教育機関である八百万学園へと入学する。 目的は退禍師になること。 そしてその他にもう一つ。行方不明となった兄を捜すこと。 幼少の頃、突如として姿を消した兄--日暮こうの手がかりを異界『黄昏刻』を通じ、れんは少しずつ捜し求めていく。 だが日暮れんには一つ、欠落した部分があった。 「まだ“開花“すらできていないのに……」 それは“開花”と呼ばれる退禍刀と心を通わせる才のこと。 名家の出自でありながら不出来な才を持って生まれ、兄以外の家族や使用人から出来損ないとして疎まれ育ってきた。 だが、そんなれんを支える存在があった。 それは物心ついた頃から傍にいた神使のリツ。 兄の代わりを務めるように、れんに優しく時には厳しく接しながらも16歳という八百万学園に入寮できるほどまでに共に研鑽を積んできた。 「リツはなんでも知ってるね」 「当然だ。私は偉い神様だからな」 冗談めかし、そんな言葉を交わしながられんとリツは八百万学園の門戸を開く。 実践を通じ退禍師としてのイロハを厳しく叩き込む担任教師の目黒。 そして学園で同じクラスとなった秋葉原秋葉と千石夏生とともにチームを組み『黄昏刻』から現れる禍津者どもから人々を守る任務につく。 実の親よりも優しく受け入れてくれる学友・教師に支えられながら、日々、兄の手がかりを捜していたある日のこと。 学園から『黄昏刻』の中でも特に危険な区域--通称〝禁域〟の拡大の通達と同時に『黄昏刻』へ侵入することを禁ずる指令が出される。 兄の失踪、そして行方は『黄昏刻』の中に在ると信じるれんは、リツと共に『黄昏刻』の中でも禁じられた区域へと侵入するがそこには立ち塞がった人物がいた。 これは平和な学園生活を脅かす数々の試練や苦悩を通じ『日暮れん』という一人の少年が退禍師として成長していく冒険譚だ。
読了目安時間:3時間43分
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