田舎娘エルフの帝都研究生活。田舎娘は別に都会で生活したいわけじゃないのです!

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車窓にて

帝都に至るまでは、汽車に乗る必要がある。 私が受け取った高等学術院への出頭命令書には、汽車のチケットが付いているため、貧乏人でも帝都に来ることが可能だ。しかも、出頭命令書は、帝国議会直々の発行書類であるため、これを関所で見せるだけで、一月の飯に悩む貧乏家庭の娘でも貴族のような待遇が受けられる。 「リューナ様、もうすぐ汽車が到着します」 「あっ、あっ、ありがとうございます」 「いえいえ、こんなことめっそうもございません」 私の父親くらいの年齢の役人は深々と私に向かって頭を下げた。内弁慶で、コミュニケーションが苦手な私としては、この役人の対応にどうすべきか分からず、同じく深々と頭を下げた。気まずい感覚を打ち消すように、雷のような恐ろしい音とが近づいてきた。 ゴゴゴゴ 頭を上げ、音の先を見ると、大きな鉄の塊が地響きを上げて徐々に近づいてくるのが見えた。 「あれが、蒸気機関車ですか?」 「はい。残念ながら、ここ、ミノー地方には2日に1回しか留まってはくれませんがね」 そうは言いながらも役人はどことなく嬉しそうに鉄の塊を見ていた。私の父親くらいの年齢の人なのに、彼の瞳はまるで子供のような輝きで満ちていた。 「汽車は舶来の技術で作られたと聞きます。遠く離れた帝国の片田舎でこう地響きを立てて、人々の役に立っている。きっと舶来の方々はさぞかし鼻が高いでしょう。 リューナ様は、高等学術院の昌平坂学問所にお勤めされるとか。この国で、この汽車に負けない技術を作ろうとする者の中に、ミノー地方に生まれの者がいると思うと、私はとても誇らしい」 黒煙を上げながら、汽車はゆっくりとスピードを落とし、私たちの目の前に止まった。その姿は、神話のドラゴンよりも美しく、大きく、そして、人の英知があるように思えた。それはきっとこの役人の気持ちに、私が触れてしまったからかもしれない。役人は私に優しく言った。 「私は人間族だからエルフの年齢が分からないが、私の娘くらいの者が国の為に働こうとするだなんて、私はとても嬉しい。私が思っている以上にミノー地方も捨てたもんじゃないだなと、君を見て私は勇気づけられた。 ありがとう。 私は君を心より応援している」 汽車の中は、恐ろしいほどの音と揺れが絶えず私の耳とお尻を叩き、早く降りたくて仕方がなかった。しかし、何故か弱音を吐く気にはなれなかった。その理由は、あの時の役人の眼差しにある。 「あんなこと言われたら、逃げ出せないじゃん」 形容し難い、複雑な気持ちに私の心は曇り空だ。 私は、自分の長いエルフ耳を触りながら、車窓を見た。青い空と元気に光る太陽の下、森や山々が今まで見たことないほどに消えてはまた現れてを繰り返している。これは汽車というものが、とても速く動いているからだ。 帝都はどんなところなのかな。怖いところじゃないと良いなぁ。ねぇ、ママ。 車窓にて、私は思考をパンを作るようにこねくり回して、そして寝た。

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