田舎娘エルフの帝都研究生活。田舎娘は別に都会で生活したいわけじゃないのです!

読了目安時間:3分

世話役

私は乗客の波に押し出される様に汽車から出た。 そしてあれよあれよと気づいたら見知らぬ土地にいた。 ここが、帝都中央駅。様々な人が行き交い、辺りは私がこれまで見たことのない賑わいや活気があった。人混みに押し流されたせいで、とても大きかった汽車がいつの間にか小さく見えた。 私は唯一の持ち物である鞄をしっかりと持って、駅構内の指定集合場所を目指した。その場所は、駅構内の警官隊駐在所らしい。私は気合を入れて人混みに飛び込もうとした。 その時、私は急に腕を掴まれた。 思わず私は飛び上がって後ろを振り向いた。 「君、ご両親とはぐれたのかい?」 とても厳しい顔つきの警官隊員が私の腕を掴んでいた。彼の腰には、剣があった。私は少し、いや、かなり驚いた。 「い、いや、はぐれてはいません」 すると、警官隊員は更に厳しい顔をした。 「家出かい?」 「ち、違います…」 「そうか。ただ君みたいな子が一人でこんな場所にいるなんてとても普通じゃない。本当の事を言いたまえ」 「あの、私、行くところがあって…」 「ならいいのだが…、いや、やっぱり、怪しい。家出だろう。とりあえず駐在所で話そう」 私はこうして目的地にたどり着いたのだった。 気づけば警官隊駐在所まで来ていた。本来ならばここで私の世話役という人に会うことになっているらしい。しかし、現状は明らかに違った。私の周りはとても強面の警官隊員で埋め尽くされていた。 「お嬢ちゃん、年はいくつ?8歳?」 「いや、エルフは幼く見えるから10歳くらいだろう」 「あ、あの、わ、私は12歳です」 「いやいや、ヒューマンなら8歳だろ!」 「ウォーウルフの俺には、エルフとかヒューマンの年は分からん!第一、外見もそんなに違いはないだろ!」 「耳が違うだろ!」 「あの、私、エルフです」 「俺には分からん!」 しばらく経つと、警官隊員達は静かになった。 その理由が私の目の前に現れた。 それは、とても可愛いヒューマンの女性だった。着ている服やアクセサリーからすると、恐らく私とは絶対に生まれも育ちも違う貴族という人なのかもしれない。 警官隊員達は、その人に対して敬礼をしている。私は遅れながら、頭を下げた。すると、その人はゆっくりと近いた。 「貴女がリューナ様ね」 私は思わず顔を上げた。まさか、自分の名前がこの人から発せられるなんて。 「私が世話役のライラニア・ヤーナドラよ。ライラと呼んで下さいませ。リューナ様」 私は驚きのあまり口を閉じることすら出来なかった。警官隊員も想定外の反応に一同驚愕の表情を浮かべていた。確かに私はどう見ても田舎娘という身なりだし、彼らが驚くのも無理はない。本人である私ですら、何も言葉を発することは出来なかった。 「警官隊員の皆様、リューナ様を見つけていただきありがとうございます。職務に戻って下さい」 すると、警官隊員達は急いで去っていった。 「あの、ライラ様。は、初めまして。これからよろしくお願いします」 私は一生懸命に言葉を紡いだ。すると、ライラはとても笑顔で私に言った。 「こちらこそよろしくお願いします、リューナ様。それにしてもリューナ様は、私が想像していたよりもとっても可愛い女の子で良かったわ」 「?」 「だって、リューナ様は帝国全土の中でも随一の神童の一人と聞いていましたから、きっと恐ろしく真面目で機械の様な人間だと私思っていましたの」 ライラは目をキラキラさせながら私を見つめた。私はえもしれぬ感情に苛まれた。

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