女神に選ばれて勇者になった俺。魔王を討伐しに行ったら、魔王は美少年でしかも小説を書いていた時の俺のファンだった。

読了目安時間:7分

エピソード:8 / 8

最終話! 俺たちの戦いは、これからだ!

「これで……終わりだあああああ!」 「ぐおおおお!」  幾星霜、何万光年かと思う程に果てしなく長い長い戦いの果て、ヒロの刃が、究極絶対極悪アルティメット超絶最終大魔王・ジエンドを貫いた! 「馬鹿な……! お前と私のレベルは同じ(インフィニティ)のはず……決着などつくはずが……」 「俺の、ステータスを、よく見るんだな」 「何ィ?」  究極絶対極悪アルティメット超絶最終大魔王・ジエンドがヒロの目を見つめ、情報開示(ステータスオープン)を行えばそこに映るのは、一那由多に及ぶ膨大な技能(スキル)の一覧。  しかしいずれのスキルもジエンドが有しているモノと同じ技能であり、違う部分は一つもない。 「違う。そこじゃない……レベル、だ」  肩で息をするヒロに促され、究極絶対極悪アルティメット超絶最終大魔王・ジエンドはヒロのレベルを見た。  そこに書かれていたのは――。 「レベル……∞+1(インフィニティプラスワン)、だと?」 「そう、だ……。俺はこの、長い長い旅の中で、初めて、レベルが一個上がったんだ。女神のミスでもない。誰かから貰ったわけでもない。この一レベルは……俺の、力なんだ。他の魔王から、レベルを吸い取っただけのお前とは、違う……!」  たった一レベルの差。その、小さな小さな差が、ヒロとジエンドとの違いだった。  そこで、ジエンドは確信した。  この男には勝てないと。  きっと自分がレベルを一つ上げれば、ヒロはまた一つレベル上げてジエンドを超える。  何度も、何度でも。 「く、ククク……見事だ。これが、人間の力か。だが、本当にお前たちが未来を生きる価値があるか……見届けさせてもらうぞ」 「当たり前だろ。この世界には大切な――九百九十九人の伴侶がいるんだからな」  ジエンドの体がひび割れ、亀裂から光が漏れ出す。 「ウ、う、う――ウボアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」  ジエンドは絶叫を上げて大爆発!  その爆発はマクロコスモを包み込み、散り散りに飛び散ったエネルギーが新たな宇宙の萌芽となり、宇宙に無数に煌めく虹を作り出す。  そして――爆発が収まり、周囲を漂っていた眩い光が、ジエンドがいた場所に結集して人の形へと変わっていく。  やがて光は、銀河に輝く色の髪と瞳を持つ少女へとなり、ヒロと向かい合う。 「私の名前は、ビギン。私も、一緒に行っていい?」 「もちろんだ!」  ヒロはビギンの手を取り、共に歩き出した――。 ***  ――。  ―――。  ――――。 『レベル1,000,000,000(ビリオン)になった村人Aの俺。何もしていないのにヒロインたちに言い寄られてしまい、ハーレムになってしまった。~次いでに勇者に変わって魔王を倒そうと思う~』は、大団円で、幕を閉じた。  その五分前まで、マオは頁を開けないでいた。  これを開いてしまえば、本当にこの物語が終わってしまうから。  だけど、読まなければ、きっと後悔する。  そして、読んだ。  マオの目から、鼻から、体液という体液が止め処なく溢れ出て、可憐な顔をぐしゃぐしゃに濡らす。  止まらない。どんなに強力な魔法を用いても、情動が抑えきれない。  それをヒロは……嬉しそうな、恥ずかしそうな、どちらとも言えない顔で眉を八の字にしながら、マオにハンカチを差し出した。 「……どう、だったかな」  恐る恐る、ヒロが感想を聞いてみる。  戦いが終わった後、ヒロはマオとの約束を守るために、ずっと置いていたペンをとって、止まっていた小説の続きを書き始めた。  その間も、色々なことがあった。  人間と魔族との間を取り持つために、多忙な日々を過ごした。  プリスと無事に結ばれて、子供が生まれた。  マッジョは引退して酒場を開き、毎日大繁盛している。  ホークはどこかへと旅立ってしまったが、時折ふらっと現れて、旅先での出来事を教えてくれた。  昔の夢を思い出したヒロはダメ元で著名な出版社に……自作の原稿を送ってみた。 『貴方は元勇者です。しかし、それを理由に私たちは、貴方の作品を見たりはしません。その上で言わせて頂きます……多分、貴方の才能は別の分野で花開くかと思います』  見事に、玉砕した。  世界を救った勇者の肩書をもってしても、出版社は冷静に、ヒロの作品を評価した。  キレたマオが出版社を爆破しかけたが、それも未然に阻止した。  確かに落ち込みはしたが、別にこれっきりと言う訳ではない。  諦めないで何度だって挑戦すればいい。何故なら自分は、勇者なのだから。  それよりもヒロは今、ようやく完結した物語の感想を、一番のファンであるマオに聞きたかった。  眩暈を起こすほどの規模(スケール)の物語であったが、テコ入れや方針転換を何度も繰り返し、五年目にしてやっとピリオドを打つことができた。  もともと破綻していた筋書きを更に手を加えたのだ。複雑骨折どころではない。換骨奪胎などヒロのスキルでは到底出来るはずもなく、書いている間も何度も心がへし折れそうになった。  それでも書けたのは、(プリス)の支えと、ファン(マオ)の応援があってこそだ。  書いている間にマオが勝手に物語を広めて回ったことで、少数ながら 『噛めば噛むほど味が出てくる』 『脳が破壊された後に謎の快感が押し寄せる』 『小説って、もっと気楽に書いていいんだ』  と、感想を言ってくれる人たちも現れた。  正直、何とも言い難いが。  いつもなら『カレーに餃子とプリンと納豆とタピオカを全部ぶち込んで、上から生クリームと醤油とハバネロソースをぶちまけてぐちゃぐちゃにしたかのような味わいがたまらない』と言ったよくわからない賞賛を送ってくれたが、今のマオはずっと泣いてばかりだった。  しばらく涙を流していたマオは、テーブルに置かれていた水を飲んだ後、少しだけ落ち着きを取り戻してそこでやっと、口を開いた。 「完結編って聞いて、最初はいろんな感想を、用意していたんだ」 「うん」 「だけど、読み終わったら、考えていた言葉が、全部吹っ飛んじゃって。今も必死になって、そこらじゅうに散らばった言葉をかき集めても、なんて言えばいいのか全然わかんなくて」  マオが大きく息を吸う。  頭の中はやっと落ち着きを取り戻したが体は妙な浮遊感に包まれていて、心はまだあっちこっちを飛び回り、どこにいるのか定かではない。  それでも、一つだけ言える確かな言葉があった。 「最後まで書いてくれて、ありがとう――」  そう言ったきり、マオは申し訳なさそうに俯いてしまった。 「ごめんヒロにい。本当に、何も思いつかなった。千年分の、たくさんの言葉を知っているはずなのに、この物語に相応しい感想を送るべきなのに、出来なかった」 「そんなことないさ。俺、マオの嘘偽りのない、真っ新な感想を聞けて、『書いてよかった』って思えたよ」  一つの大きな使命を成し遂げたという達成感と同時に、全身から急激に力が抜けていくような感覚を抱きながらヒロが笑えば、マオも目元を緩ませて笑った。 「五年前さ、続きを書けって。物語を完結させろって言ったけど、終わったら終わったで……やっぱり寂しいな。もう、続きはないんだもの」  マオが最終巻の表紙を優しく撫でる。  マオにとって物語は退屈を紛らわすだけの手段ではない。  移ろい変わりゆく世界の中で唯一、その時代を生きた人が残した、記録と記憶でもある。  この本は、マオにとってもう一人のヒロなのだ。 「僕、ヒロにいがいなくなっても、この本を、ずっと大事にするよ。いつまでも、いつまでも」  感傷に浸るマオに対してヒロは、わざとらしく咳払いをした。 「ヒロにい?」 「最後の話でも書いただろ。ジエンド(終わり)は、ビギン(始まり)でもあるって」 「……ごめん、何を言いたいのかわからない」  マオは訳が分からず、苦笑する。  普段なら察しがいいはずが、大事なところで抜けているのがマオという友達だ。 「小説を書き終えた作家は、次に何をするか、知っているか?」 「んー……? 旅行?」 「っ! ハハハ! そっか、旅行! 確かに最後はずっと部屋に缶詰だったしな!」  マオの見当はずれな答えに耐えきれなかったヒロが噴き出して盛大に笑う。 「ちょっと! 仮にも魔王を笑うって、いい度胸しているよね!?」 「ごめんごめん! それもいいな! プリスとサンを連れて、マッジョも誘って皆で――でも、違うんだ」  ヒロは、その目に微かな不安をにじませながらそれ以上に、胸に抱いた大いなる野心を燃え上がらせて、マオに向けて宣言した。 「新しい物語を書くよ」  マオは一瞬、如何なる小言も、大陸の裏側から聞こえる悪口も聞き逃さない自分の耳を疑った。 「しん、さく?」  マオが半信半疑で呟けば、ヒロが「うん」と頷いた。 「新作……? 本当に? それは!?」  大好きな作者(ヒロにい)の、新作小説!  マオは興奮を抑えられず、本を抱きしめたままガタンと立ち上がる。 「ああ。タイトルだって、もう決めているんだ」  物語を読み終えて、ようやく穏やかな海のように静かになっていたマオの心が波打ち、抑えきれないたくさんの感情が嵐となって、心に無数の花を咲かせる。 「聞いてもいいの!?」 「もちろん。マオだけに、まだ誰にも教えていないタイトルを、一番最初に教える。その、小説のタイトルは――」 【女神に選ばれて勇者になった俺。魔王を討伐しに行ったら、魔王は美少年でしかも小説を書いていた時の俺のファンだった。】 ~fin~

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  • ひよこ剣士

    東十条

    ♡1,000pt 〇88pt 2022年8月8日 22時36分

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    最後まで書いてくれてありがとう…!

    東十条

    2022年8月8日 22時36分

    ひよこ剣士
  • 騎士

    ジンブレイド

    2022年8月8日 22時52分

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    超ハッピー!

    ジンブレイド

    2022年8月8日 22時52分

    騎士
  • 兵馬俑

    来賀 玲

    ♡1,000pt 〇50pt 2022年8月10日 9時38分

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    全俺が泣いた

    来賀 玲

    2022年8月10日 9時38分

    兵馬俑
  • 騎士

    ジンブレイド

    2022年8月10日 10時55分

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    これからもよろしくね!

    ジンブレイド

    2022年8月10日 10時55分

    騎士
  • ひよこ剣士

    東十条

    ♡315pt 〇11pt 2022年8月8日 22時35分

    ブラボー! 目一杯楽しませていただきました! そしてハッピーエンドをありがとうございます! サイコー! そんなワケで最後はやっぱりこのスタンプをば!

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    東十条

    2022年8月8日 22時35分

    ひよこ剣士
  • 騎士

    ジンブレイド

    2022年8月8日 22時52分

    ノベラポイントありがとうございます! 短い間でしたが、お付き合いして頂きありがとうございました!

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    ジンブレイド

    2022年8月8日 22時52分

    騎士
  • あんでっどさん

    犬井 たつみ

    ♡1,000pt 〇10pt 2022年8月8日 21時53分

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    ▼▼

    完結おめでとうございます

    犬井 たつみ

    2022年8月8日 21時53分

    あんでっどさん
  • 騎士

    ジンブレイド

    2022年8月8日 22時52分

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    勿体ないお言葉です

    ジンブレイド

    2022年8月8日 22時52分

    騎士
  • あんでっどさん

    和三盆

    ♡2,000pt 2022年8月10日 1時18分

    お見事過ぎるタイトル回収!!!! ブラーーーボーーー!!!! 大変楽しく拝読しました。 いち字書きとしても、とてもいい刺激を頂きました。ありがとうございます!! では最後に一言。武神お嬢様とブレブレ、続きはよ!

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    和三盆

    2022年8月10日 1時18分

    あんでっどさん
  • 騎士

    ジンブレイド

    2022年8月10日 5時40分

    最後までお読みいただきありがとうございました! そちらの方も鋭意執筆いたしておりますのでしばしお待ちを!

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    ジンブレイド

    2022年8月10日 5時40分

    騎士

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