脱法勇者

読了目安時間:10分

エピソード:92 / 109

狼たちの国で

ほてるカレー

「ウェアウルフの気持ちになって考えることだね」  別れ際にローランはそうリクに言った。 「そう言われてもな……」  と、いうのがリクのローランの言葉に対する率直な感想だった。  でも、その言葉には確かに何かのヒントはあるような気がした。しかし、それにまつわる思考がはっきりした像を結ぶまえに、リクは自分の家にたどりついた。 「うっわ! 何この匂い!」  家に帰って開口一番、リクはそう言った。  なにしろ家の中を、なんとも言えない異臭が満たしていたのだ。嗅いだことない匂いだ。不快ではなかったが、かといって単に気持ちのいい香りとも言いがたい。食べ物の匂いのようだったが、リクの知る何とも似ていない。 「おかえり」 「あっアルル? なにこれ?」  アルルはいつものテーブルで本を読んでいた。このあいだ買った伝記だ。もう読み終わりそうだ。けっきょくアルルに先に読まれてしまった。 「これって?」 「このにおいだよ。なに? 錬金術でもやってるの?」 「わはは」  アルルが笑う。彼女がいつも通りなので安心した。  室内に足を踏み入れると匂いは一層濃くなった。とにかくこの世の匂いとは思えないぐらいで、異界の影響を疑った。魔術かなにかだと思った。 「料理なわけだが」 「アルル、何作ったのぉ?」 「失礼だな。わたしじゃないぞ」  アルルがむっとした表情で言う。  てっきり、アルルが羽根を伸ばせるのをいいことに、何か料理でもして、常人には想像もつかないような一品をこしらえ、リクに食べさせようというのかと思った。 「違うっての。わたしはそんな、ベタベタなことはやらないわけだが」 「じゃあなんなの。これは」 「ゼストリエルだが」  アルルが言うには、リクがローランの家に出かけたあと、リリヤとゼストリエルを連れて三人で買い物に出たのだという。つまり、この室内の異臭はそこでの買い物の成果、ゼストリエルの料理ということらしい。  大丈夫なのか? アルルの料理よりもっと不穏だ。 「リクも市場に行ったわけだったな?」 「……そうだよ」 「会わなかったな」 「まあ、市場、広いからね」 「広場にコボルトの火吹き芸人がいただろ。見たか?」 「ま、まあね」 「うそつき」  アルルはぱたんと本を閉じて、含み笑いをする。  しまった、引っかかった。 「そんなのいなかったわけだが」 「あー……ずっる」 「ウソつく方がずるいだろ。で、どこ行ってたんだ」  さらに嘘を重ねることもできたが、観念することにした。  しぶしぶローランのところに行っていたことを認め、話したことについてかいつまんで説明した。アルルは怒る様子でもなく、じっとリクの話を聞いていた。 「そうか、ローランがなあ……」 「全然知らなかった」 「まあ。昔話なんだろうな。隠してたのも悪気はなかったと思うぞ。そういう話って子供には説明しづらいだろうし、」 「えっと、ごめん。アルルを置いてこうとしたわけじゃ」 「置いてっただろっ」 「でも……」 「ま。しょうがないわけだが。もうウソつくなよ。つぎは怒るからな」  アルルはいちおう許してくれたらしい。  なんでわかったの? と訊いてみるが、教えてはくれなかった。  リクは頭をかきながら、台所のほうに行く。匂いはますます強い。 「おお、帰ったか。放蕩者」  ゼストリエルが台所でリクを迎えた。  彼は調理台の上で丸くなっていた。  台の上には妙な小袋がたくさんある。中を見てみると何かの種子らしいものやら木の皮や根らしいものが入っていて、それぞれが特有の匂いを発していた。それと薬研だ。小袋の中身をすりつぶしたらしく、黄色い粉がついていた。 「リク様、お帰りなさい」  リリヤもいる。彼女はかまどの前で鍋の中身を混ぜていた。  鍋の中には……なんと言ったらいいのだろう。茶色っぽい液体が煮立っていた。それは油っぽく光り、粘っこそうな泡を立てていた。肉や野菜のようなものが中に見える。リリヤはそれをリズミカルに木べらでかき回している。  そのとなりでは、鉄板の上で変わった形のパンが焼かれ、蓋をされた小鍋が白い泡を吹いていた。 「アルルをごまかしてどこに行っていた? またどこかの女の子か?」 「違うよ。人聞き悪いな!」 「お前はその点については信用ならん」 「お嬢様に嘘をつくのはやめてくださいね。リク様」  リリヤがリクをちょっと睨む。 「お嬢様が泣いたら、場合によっては、リリヤ、キレてしまいます」 「は、はい」 「もうやめてくださいね」  リリヤの口調は柔らかだったが、有無を言わせぬ感じがあった。  というか、有り体に言って殺気すら感じる。 「大変だったのだぞ。アルルがお前のウソに気付いてから、機嫌の悪いこと悪いこと。せめて外に出してやるかと、私がリリヤに無理を言った体にして、町に連れ出してやった」 「そうですよ。市場にいる間も、アルル様はよそ見してばかりで」 「まったく、先が思いやられる」  ゼストリエルはあくびをして、もうできただろう。という。 「水も欲しくなるから水差しごと置いてくれ」 「はい、ゼストリエル様」 「リリヤ、今日はご苦労であった」  食卓の準備が始まった。  うーん、これを食べるのか、とリクはあらためて不安に鍋の中を見る。 「はるか南方の伝統料理だ。この国に伝わったのはずいぶん昔のことになる。およそ800年近く前のことになろう。当時は貴族や名家の口にしか入らない物珍しいものだった。私も宴席で数度しか食べたことがない」  ゼストリエルはそう、食卓に並んだものの解説をした。  皿の上には、平べったいパンと、黄色い炊かれた穀物、それから、鍋で煮立っていたどろどろの液体が並んでいる。リクが正確に理解できるのはパンだけだ。 「こんな料理知らないわけだが」 「聞いたこともないよ」 「私も存じません」  だろうな。とゼストリエルはむしろ満足げにする。 「知らぬのは無理もないな」 「外国の料理?」 「まあ、明らかにこの国のじゃないわけだが」 「まあ聞け。この料理は、冒険時代に入ってこの国では作られなくなった。遠方との交易が途絶えたせいで、材料の香辛料がろくに手に入らなくなったからな。作れなくなって失伝したのだ。久しく失われた料理だ」 「へえ」  リクは多少興味を持って、スプーンで料理をすくってみた。  あらためて見るとシチューに似ている。思ったほど理解不能でもないかもしれない。 「きょう、むずがるアルルをあやすために市場に出てみたら」 「あやすとか言うな。赤ちゃんじゃないわけだが!」 「ずいぶんたくさんの香辛料が出回っているのが目についてな。平和になって交易路が復活したのだろう。それで、ひとつ昔の味を再現しようと思ったのだ。なんにせよ、この料理はもともとの南方と、あとはそこに出入りする船乗りぐらいしか食べられないものだ。心して食うがいい」 「昔の高級料理なわけか」  アルルもリクと同じようにして、スプーンで液体をつついている。  液体をパンにつけたり穀物と混ぜたりして食べるらしい。  リクにしてみれば、違法なナイフやフォークを使わずに食べられるのはかなりありがたい話である。それだけでも目の前の料理にいくらか親近感がわいた。 「不躾ですが……大丈夫なんでしょうね?」  リリヤが心配そうに言う。  警戒心の強い彼女は、やはり見慣れぬ料理をかなり不安がっている。 「心配する必要はない。むしろ薬になる。強壮剤になるぐらいのものだ」 「へえ、強壮剤ですか。つまり精が……」  リリヤはリクとアルルのほうをちらと見て、楽しそうに高い声を出す。 「それはちょっと今夜が心配ですねえぇ」 「ははは。エリシアは喜ぶかもわからんな」 「ヴァス様がここにいたらなんて言うでしょうかねっ」  盛り上がるふたりの会話を、リクとアルルは聞かないふりをする。  気まずいんだよっ。とゼストリエルを小突きたくなった。  アルルもリリヤを小突いてやりたいところだろう。なんとなくわかる。  とにかく、食事に集中しよう。それしか逃げ場はない。 「からい」 「けっこうおいしいが」  料理は刺激がやや強い。何度か水を口に含む必要があったが、だんだん慣れた。  アルルは口に合ったようで、かなり喜んでいた。機嫌もよくなる。  リリヤはというと、自分が作ったくせにはじめ警戒心丸出しで、口に運ぶのに勇気を要したようだったが、無害だとわかってからはどんどん食べ始めた。ふだんは控えめなのにお代わりも食べていた。   「ゼストリエル、あんがいグルメなんだな」 「まあな。猫になる前はそれなりに舌が肥えていた。アークウッド家の子弟として、それはもう多くの宴席に付き合わされたからな。当時はうんざりしていたが、今となってはなつかしい」  ゼストリエルはそう言う。彼の猫の身体ではこの料理は食べられないらしく、リリヤの用意した茹でた肉を食べ、香りだけ味わってなつかしそうにしている。 「それはもう名家だったのだぞ。うちは」 「はいはい」  食事が終わりかけたころ、リクはふと、戸棚に自分の財布が置かれているのが目についた。そこに置いた覚えはないから、誰かが動かしたのだろう。ああ、そうか。財布か。  市場に行くと言って出たくせに、自分は財布を置いていったのだ。  我ながら間が抜けている。自分は嘘はあまりうまくないのだろう。  こんな調子じゃ、この先もずるいことはそうできそうにないな。と、アルルを横目で見る。 「な、なんだ?」  アルルはリクの視線になにかびくっとしたような反応をする。 「財布、届けようとしてくれたの?」 「ウソなのは知ってたけど、いちおう持って出ただけだが」  アルルは小さくほおを膨らませる。  香辛料のせいか、顔がちょっと赤らんでいた。 「あ、ありがと」 「ん……」  リリヤがいつくしむような目でこちらを見ている。  尊い、とかなんとか頭の中で言っているのがわかった。  アルルとうなずき合い、同時に食べ終えた。  そろって食卓を離れ、それぞれの部屋に戻った。やりづらいんだよな。と、自分のベッドに横になって思う。口の中がまだ熱かった。  すっかり暗くなったが眠気はまだ来なかった。退屈したので、リクは自室を出て大部屋に戻った。アルルがひとりでお茶を飲んでいた。 「まったく。あれだよね。ゼストリエル」 「リリヤもだが」 「そうそう。困るよね」 「な」  一緒に冷めかけたお茶を飲みながら、ふたりはリリヤとゼストリエルのことについていくらか愚痴のような会話を交わす。  暗黙の了解で、直接的な表現は避けて話したのだが、お互い、要するに仲をからかわれるのがうっとうしいということで意見はおおむね一致した。  とはいえ、一致したとはいえそれでどうというわけでもない。  そろそろ寝るかという感じになってきたころ、来訪者が来た。  この時間に来るのはだいたい決まっている。そしてその通り、シルクだった。  今日のシルクの衣装はわりあい常識的で、薄いすみれ色のドレスに黒いレースの肩掛けだった。今日は普通だな、とリクは一瞬思ったが、よく考えると女装しているから一般的ではあるまい。慣れてきて基準がシルクに引きずられている。 「御機嫌よう。姉上、押しかけ女房はうまくいっていますか?」 「なっ……」 「その調子でニンフライト家の将来はボクに一任ください。悪いようにはしません。父上はさいきん例の爪をかむクセが……って、なんですか、この匂いは!」  シルクは家に入るなり、匂いに文句を言った。  アルルもリクも鼻が慣れていたが、残り香は相当らしい。  彼はのけぞるようにしてリクとアルルを交互に見る。 「錬金術か黒魔術ですか? 違法ですよ。でもここだけの話、実はボクもわりと興味が……」 「ちがうって、外国の食べ物!」 「押しかけ女房じゃないわけだが、家出だ家出!」  シルクの独白は聞かなかったことにして、リクとアルルはそれぞれつっこみを入れた。 「割合、食欲をそそる匂いですね。残ってたらいただけませんか。忙しくて、昼も夜も食べてなかったので……」  珍しくそんな人間味のあることを言うシルクだった。  温め直した料理をシルクは急ぐ様子で口に運び、なかなか悪くないと言った。 「それはそうと、ヴァスが襲われました」  食べながら思いだしたかのようにシルクは言う。

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  • ラティナ(うちの娘)

    CoRuRi

    ♡3,000pt 〇300pt 2019年11月22日 0時13分

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    ステキですっ!

    CoRuRi

    2019年11月22日 0時13分

    ラティナ(うちの娘)
  • 男戦士

    Jun

    ♡3,000pt 〇300pt 2019年11月21日 20時28分

    偶然にも今日のお昼にシーフードカレーを作り、夕食は残りでカレードリアを作ったのでタイムリー!物語の全貌が徐々に見えてきましたね。毎話楽しみにしています。

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    Jun

    2019年11月21日 20時28分

    男戦士
  • うどん

    まくるめ

    2019年11月21日 22時48分

    カレー、考えた人すごいなと思います。

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    まくるめ

    2019年11月21日 22時48分

    うどん
  • 女魔法使い

    ローズガーデン

    ♡500pt 〇300pt 2019年11月21日 21時41分

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    いいぞ、もっとやれ!

    ローズガーデン

    2019年11月21日 21時41分

    女魔法使い
  • ブルーマーメイド

    桑白マー

    ♡3,000pt 〇100pt 2019年11月21日 19時45分

    美味しいカレー٩(ˊᗜˋ*)و異国情緒!カレーを知らないものの様に説明するのは楽しいですね!₍₍ (ง ˘ω˘ )ว ⁾⁾とか言ってる場合か!!ヴァスがね!!(。ŏ﹏ŏ)どういうことっ!

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    桑白マー

    2019年11月21日 19時45分

    ブルーマーメイド
  • うどん

    まくるめ

    2019年11月21日 22時48分

    カレー、初めて見た人どんな感想かなと思いながら書きました

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    まくるめ

    2019年11月21日 22時48分

    うどん
  • ひよこ剣士

    kotoro

    ♡1,000pt 〇100pt 2019年12月26日 2時02分

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