ホラー 短編 完結済
十年ぶりで、親友が訪ねてきた。 月の明るい晩だった。 彼は僕に缶詰を差し出して言った。 「これを預かってほしい。お前にしか頼めないことだ。よろしく頼む」 「頼むと言われてもなあ。これ、中身は何なんだい?」 参ったなと思いながら、僕は鼻をすすり、缶詰を見下ろした。 「中身は……」 言いかけて、親友はしばし黙り込んだ。 月明かりの中、僕は彼の沈黙に付き合った。 「中身は、俺の狂気だ」 まるで舞台の台詞のようだった。
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2020年11月4日更新
箱入り娘の女子高生・白樺柚葉は、ある日父親に「親元を離れて暮らしなさい」と命じられた。 ファザコン気味の柚葉はすんなりと承諾。しかし電車の切符も一人では買えない彼女に一人暮らしはハードルが高い。 そんな柚葉の元に、かつて遠くに旅立った幼馴染みの少年が帰って来た。 大きく立派に成長していた彼は、彼女が必要としていない執事になっていた。 「私は執事なんていらないわ」 「俺と結婚してくれ」 ……何だかちょっと噛み合わない二人が、仲良く二人暮らしなんて出来るのだろうか。 お嬢様と執事の恋愛譚、始まります。
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作者からの一言コメント
狂っていたのは君か、僕か。