おれが魔王を倒すために必要なノベラポイントを数えろ

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数えきれない

「もってけ★ノベラポイントキャンペーンが始まったか……」  おれは拳を握り、遠くに霞む魔王城を睨んだ。 「本当にやるのか?」  仲間たちが不安そうな視線を投げかけてくる。 「ああ、この日間を逃せば、次に魔王を倒す機会は来月になるだろう」 「だが利用規約違反かもしれんぞ」  仲間の一人が呪われた言葉を口にした。 「馬鹿な。おれは投稿作品に付与されたポイントに応じて強さが高まる異能を持っているのだ。そのおれがポイントをくれと言って何がおかしい、そんな言葉で勇者の力を阻もうとするのか!」 「しかしすでにランキングから消されたものたちが」 「無様な連中だ。Twitterで呟くなど」 「女神はエゴサしているのだ、四六時中!考え直せ、勇者よ!」  おれは仲間の制止を振り切ると、道なき道を駆けだした。 「口だけの連中といつまでもつるんでいたのが間違いだった。ここから先の戦いに、あいつらはついてこれまい」  毎日1000ポイント付与されるにも関わらず、100ポイントずつ小出しにするような連中だ。  魔王との戦いで信頼するに足る者たちではない。  おれが本当に必要なのは確実に1000ポイントを入れてくれる読者なのだ。 「うおおおおおおおおお1000ポイントくれええええええええ!!!」  この作品が投稿された段階で、本当にポイントが入っているかはわからない。  しかし信じる心が大切なのだ。  読んでいる者がいる、1000ポイント入る、そうに違いない。  おれは狂信者の如く1000ポイント!応援ポイント!と叫びながら魔王城に討ち入った。  すぐにフォロワーがリプライを飛ばしてきたが、素早くブロックする。  きれいごとではないのだ。  何よりまともな方法ではない連中と戦おうというのだから。 「くれっ!食らえ!1000ポイント入れたぞ、速く、もっと速く1000ポイント返せ!」  せき止めようとしてくるクラスタの連中をなぎ倒しながら、おれは城の中を縦横無尽に走り続けた。 「貴様、そんな方法で手に入れたポイントで何が嬉しいのだ」 「やかましい!読み専の貴様らに咎め立てされるいわれなどないわっ!」  この苦しみは戦う人間にしかわからぬ。  批判に晒されるかもしれない、そもそも炎上目的なのにバズらない可能性が高い。  そうなればどうなる? 「複数アカウント作るなんて面倒なことはしたくねえ!!!!!!」  気付けば、おれは魔王の居室にたどり着いていた。 「よくぞアカウントがまだ無事だな、勇者よ」 「おれの心配をしてくれるとは余裕だな。今からおれは大っぴらにポイントを要求するんだぞ」  魔王は玉座から立ち上がると、赤ブチの眼鏡を投げ捨てた。  眼鏡っ娘がアイデンティティを捨てるとは恥を知れ!少しでも揉めそうな内容を詰め込むしかない。 「いくぞ、魔王。ハッシュタグを無節操につけながら、1000ポイント入れてくれと毎秒スパムしてやる」 「仕方あるまい、あまり規約で縛りたくなどないのだがな」 「何?世迷言か?1000ポイントくれっ!ランキング入りさせろ!」  だが、そのとき、魔王が銀髪を振り乱しながら、よからぬ言葉を吐いた。 「な、なにをした」 「利用規約の第13条第15項!」 「うっうわああああああああああああああああああ、アカウントが削除されるっ警告だと」  だが、もはやおれに後戻りなどできない。  初回の警告を無視して、作品性だと言い張ってごり押しするしかないのだ。  これは露骨なポイント要求などではない、魔王を倒すために必然的に求められている展開なのだ。 「魔王!おれは何もポイントが欲しいわけではない!表現の自由だのといった観念的な内容に言及するつもりもないぞ。ただ貴様のその傲慢な態度が気に食わんのだ。決して負けを認めたりはしない!!」 「愚かな。規約云々ではない、品性の問題だというのに」 「貴様、それでもまともな企業アカウントの言うことか。だったら規約の意味がないだろうが、抜け穴のないまともな規約を作るがいい、うおおおおおおおおお1000ポイントくれええええええええ!これは作中のキャラクター性に依拠する発言です!」  だがポイントは恐らく入っていない!  ここまででPVが稼げていない上に、こういった冷笑的な内容に対してノベプラの読者は迎合するほどまだ擦れていないのだ!  あとか月遅ければ、もう少し批判的な内容を受け入れる土壌もできているだろう! 「くそっ、ダメだ。有償ポイントだ、金払ってくれ!無償ポイントでは勝てない!」 「儲かる!」 「頼む!誰か!10000円でいい!有償ポイントで払ってくれ!」  凄惨な戦いの場を遠巻きに眺めるものたちがいた。  勇者が置き去りにしてきた仲間たちである。 「ガチャで500ノベラポイント手に入ったわ」 「いやいいからコンビニでポイントを買って来てくれ!ガチャで手に入るポイントはたかが知れてる!」 「勇者……なんて姿に……あなたはそんな人ではなかった」  もはやおれは自分の作品の内容がどうなろうと知ったことではなかった。  重要なのはポイントが入ることであり、有償ポイントが入ることなのだ。 「ホビージャパンがアニメ化潰したのは、香川県民以外のうどん好きと同じくらい信用できねえ!!」 「まあいろいろと難しいもんですよ」 「ちぃっ、このままじゃ埒があかねえ……これだけはやりたくなかったが……」  ぎらりとおれは財布の中から札を抜いた。限度額30万円のクレジットカードだ。 「な、勇者よ。貴様何をするつもりだ」 「言わずともわかっているだろう!もはや手段などどうでもいい、おれは自らポイントを買う!だがな魔王、100000ポイント払っても割は後からキャッシュバックされるのだ。お前を倒すために自腹を切っても割引きで済む」 「愚かな、乞食してる奴の方がまだマシだぞ!」 「おすすめチケットでトップに磔にするより直にポイントを注いだ方が強いと教えてやる!食らうがいい!!」  おれは課金する前に改めて要求する。 「もしもこれを読んでいる読者の皆さんが、今週中にポイントを入れてくれなかったとしよう」 「やめろ、それ以上は言うなっ!!」 「おれは消費者金融に行く!!」 「くそっ何と度し難い自意識の肥大化した創作者なのだ」 「やかましい、これはおれの金だ!!規約上難癖つけたければやるがいい、うおおおおおおおおおお!!!!!!!」  クレジットカードは何枚でも作れる!!社会的信用が生きているうちは!! 「や、やめろ、貴様この世界ごと破壊するつもりか」 「何が魔王だ、何が女神だ、何がランキングだ。うどんで首くくれ!出版社からの広告費!領収書ください、経費で落とすからあああああああああああ!!!!!」 「だめよ、勇者!!本当のことを言ってはいけない!!」 「当社の信用を損なう内容が含まれています!」  振り上げた拳を下ろす先がない。 「悲しい……なんて悲しい獣になってしまったの……」  そのとき、油田が湧いた。 「やめたまえ勇者よ、君のお金はそんなことに使うためにあるのではない」 「な……貴女はオイルマネー」 「このお金で私のために自費出版してください、もうポイントとか版元とか気にしなくていいんです」 「結婚しよう!」 「はい!」  こうして世界に平和が訪れた。  この作品にポイントが入るのか、それを知る者は誰もいない。  ただ二度と、話の続きが投稿されることはなかったという。

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  • 土偶

    S.R.

    ♡10,000pt 〇3,000pt 2019年8月9日 23時09分

    すずきセンセのテンションが上がり過ぎたと言うか、興が乗り過ぎた結果としてこのような文章が出力されて投稿にまで及んでしまった事を僕はかなり真剣に反省しています。が、それはそれとして横隔膜を強打はしたので……。

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    S.R.

    2019年8月9日 23時09分

    土偶
  • 猫

    鈴木

    2019年8月10日 11時33分

    楽屋ノリを外に出すと、ろくでもないことになる

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    鈴木

    2019年8月10日 11時33分

    猫
  • 野辺良神社の巫女

    りんご屋さん

    〇10pt 2019年10月24日 12時52分

    ごめんなさい…僕にはこれしか力が…10pt!!

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    りんご屋さん

    2019年10月24日 12時52分

    野辺良神社の巫女
  • 猫

    鈴木

    2019年10月24日 21時00分

    そろそろ勝てる気がしてきた

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    鈴木

    2019年10月24日 21時00分

    猫
  • 土偶

    S.R.

    ♡10,000pt 2020年6月4日 7時05分

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    「好きだー!」ステラ

    S.R.

    2020年6月4日 7時05分

    土偶
  • 猫

    鈴木

    2020年6月5日 0時11分

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    筆文字「Don’t think,Feel.」

    鈴木

    2020年6月5日 0時11分

    猫
  • 土偶

    S.R.

    ♡10,000pt 2020年1月3日 16時17分

    あけましておめでとうございます、すずきセンセ。今年もポイントを■■■■■!!

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    S.R.

    2020年1月3日 16時17分

    土偶
  • 猫

    鈴木

    2020年1月6日 13時46分

    あれから何か月経ったと思ってるんだ

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    鈴木

    2020年1月6日 13時46分

    猫
  • ひよこ剣士

    piyo

    ♡10,000pt 2019年11月3日 21時51分

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    応援しています

    piyo

    2019年11月3日 21時51分

    ひよこ剣士
  • 猫

    鈴木

    2019年11月4日 0時12分

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    「また来てネ☆」ステラ

    鈴木

    2019年11月4日 0時12分

    猫

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