怪奇異譚─KAIKIITANN─

読了目安時間:4分

エピソード:2 / 5

展開に重きを置いた話。 ラストの部分をどう感じるか──そこが分かれ目かな。

日記の中の悪夢

 わたしは高校二年生になった。  学校生活では彼氏もできて順風満帆(じゅんぷうまんぱん)。  小学生のころに大病を(わずら)って記憶の一部がはっきりとしないわたしは、中学生のころは学校にもろくに通えず──友だちのいない、寂しい学生生活を送ったのだった。  なぜかはわからないが、小学生から中学生の終わりごろまで「不安定な精神状態」にあったと、お父さんから聞かされている。  自分ではそうした思い出はなく、友だちと仲良く遊んだりしたことも、うっすらとだが覚えていた。  小学生から中学生の──二年生のころまでわたしの家は、よく引っ越しをしていた。親の転勤が理由だと思うが、よく覚えていない。  母親は、わたしが中学生二年生のころに他界した。  母はノイローゼだったんだと、お父さんから聞かされている。  いまは父子家庭だけど、お父さんは働きながらわたしのことをたった一人で育ててくれた。  そんなある日、自分の部屋にある古くなった机の代わりに、新しい机と交換するというので整理していると、鍵のかかった引き出しの中から一冊のノートが出てきた。記憶になかったが、ノートの表紙には「にっき」と、たどたどしい字で書かれている。 「わたし、日記なんかつけていたんだ」  興味を引かれたわたしは、最初から読んでみる気になり、簡単に流し読みすることにした。  とりとめのない話がつらつらと書かれている日記は退屈で、幼い字と文章で書かれたそれは──読んでいても、ぜんぜん自分のことが書かれているといった気持ちにはならなかった。 「なんか不思議……」  その内容には日常に起きた「○○ちゃんと遊んだ」といったことのほかにも、特徴的なことが書かれるようになっていった。──それは、見た夢の内容を記録したものだった。  ○月 ×日 △曜日  また電車に乗っているゆめを見た。  わたしはよく電車やえきのゆめを見る。  電車がすきでもないのに、ふしぎだ。  そんなことが書かれるようになっていった。  夢のことがたびたび書かれるようになり、だんだんと日常の事柄よりも──夢の中で起きたことのついての内容が増えていく。  ○月 ×日 △曜日  たんにんの先生は本当にきらいだ。  わたしがわからない問題のときばかり、わたしをさして、こくばんの前にわたしをよび出す。  本当にいやな先生。  消えちゃえばいいのに。  ああ、そんな先生がいたのか。  子供のことだ、たまたま出席番号で当てられたとしても、いじわるでやっていると思い込んだのだろう。  わたしはそう思い、なんだかほほえましく──まるで、他人の子供時代の日記を読んでいるような気分になっていた。  ○月 ×日 △曜日  ゆめを見た。  えきのホームに人が立っているのが見える。  かいだんを下りてその人の近くにいくと、それはたんにんの○○先生だった。  先生はわたしには気づかずに、白線の手前に立ってぼうっとしている。  わたしはしずかに、そうっと歩いて、先生の後ろに立った。 (え、なにをする気なんだろう)  わたしは日記の中の「わたし」に不気味なもの感じはじめた。  先生の後ろに立つと、えきの近くのふみきりの音がなりはじめる。 「カンカンカンカン」  しゃしょうさんの声が聞こえる。 「()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()」  わたしは先生のせなかを押して、せんろの上につきとばした。 「ぐしゃあっ」  電車が通って、まっかな液体の入った水ふうせんがばくはつしたよ。おもしろかった。 「え……わたしって、こんな子供だったの……?」  夢の中のこととはいえ、あまりにショッキングな内容だ。まして、子供のすることじゃない。  その後のページにも、信じられないことが書かれていた。  ○月 ×日 △曜日  つぎの日に学校にいくと、○○先生が亡くなったと聞いた。えきのホームから電車にとびこんだって。  ゆめみたい。  その後のページにも、○○ちゃんとけんかした、○○ちゃんきらい。といったことが書かれると、翌日には駅に立つ友だちの背中を押して、線路上に突き飛ばし……その友だちを夢の中で殺してしまった。  すると、その翌日には学校で、○○ちゃんがえきからせんろに下りて、電車にはねられて死んじゃった。まあ、しかたがないよね。  みたいなことが書かれているのだ。 「なによこれ……まるで夢の中で殺した相手が、現実でも死んじゃうみたいじゃない……」  わたしはこの日記を読むのが、だんだんと怖くなってきていた。  その後も繰り返し、複数人の友人や先生が死んだと書かれている。  立てつづけに学校の、おもに(いち)クラスの生徒や教師が死亡したこの事件は──学校内で大きな問題になったようだ。  そのことについて書かれたあとで「わたし」は、こんなことを言っている。 「わたしをいやな気持ちにさせる人は、みんな死んじゃえばいいんだ」  なんてことだ。  わたしの過去に、こんな()まわしいことがあっただなんて。わたしの記憶が曖昧(あいまい)なのは──この現実を、理解したくなかったからなのかもしれない。  夢に出た人をつぎつぎに殺害し、現実でもその人が死亡する──そんな、バカな話があるものか。  わたしはそう思い込もうとした。  その後のページをめくるが怖かったが、わたしは勇気を振り絞って、最後のほうのページを見ることにした。そこには中学生になったわたしが、わたしの字で、短い文章を殴りが書きしてあった。  ○月 ×日 △曜日  お母さん、大嫌いよ。  あなたなんて……いなくなればいい。

感想などいただけると嬉しいです。

コメント

コメント投稿

スタンプ投稿


このエピソードには、
まだコメントがありません。

同じジャンルの新着・更新作品

もっと見る

読者のおすすめ作品

もっと見る

  • 病印 忘却の花嫁

    怪異と戦う一人の少年の物語

    267,100

    79,530


    2022年12月9日更新

    第零部 ある日、霧崎=悠は夢を見た長い黒髪の幼き少女が悠に「遊ぼ」と声をかける。すると手の甲に時が刻まれ、それが零になると悠は「死」ぬと少女が言う。 その遊びの内容は怪異と戦うことだった… 霧崎悠は異能力「黒レコード」を使って怪異の謎を探り推理して怪異となった犯人の正体をみつけて戦う。 第一部

    • 残酷描写あり
    • 暴力描写あり
    • 性的表現あり

    読了目安時間:11時間53分

    この作品を読む

  • 心療内科の友美さん ~私、動物専門なんです~

    読んで頂けたら幸いです

    103,900

    776


    2022年9月3日更新

    動物と話が出来るあくまで自称心療内科医(動物専門)でスキル発動の特技を持つ、中学2年生、加納友美さん。 コミュ障気味で面倒くさがり屋だが、断れない友美の前に相談に現れる様々な動物たち。 猫・うさぎ・犬・鳥・爬虫類などなど。 そしてその動物たちに振り回される毎日・・・・・。 ガチのチャリ立ち漕ぎさせられたり・・・ボードゲームやらされたり・・・セクハラされたり・・・いじめられたり・・・説教されたり・・・。 そんな中、恋の悩みや人間からしたらどうでもいい悩みを友美さんが悪戦苦闘もするが、一つ一つ解決していき成長していく日常。 ラブコメもあります。

    読了目安時間:6時間56分

    この作品を読む