機械屋彼女と物書き彼氏

読了目安時間:3分

2章 3

お冷や

 尚樹は、着替え終わると龍生の所に行った。 「おう、ご苦労様。仕事初めはどうだった」 「どうだったもこうだったもないよ。なんかすごく山尾さんに嫌われてるみたいだけど」 「何でだろうな?尚樹はそんなに珠理に嫌われるようなタイプじゃなさそうだけどな」 「めちゃくちゃ言われたよ。掃除も出来ないような奴って、面と向かって言われたし」 「はは…」  龍生も苦笑いしている。 「まあさ、今日はパーっと俺ん家で飲むか?な?」  尚樹はそのまま帰っても、悔しさやら腹立たしさで寝れないだろうと思い、龍生の提案を呑んだ。 「わかった。近くに銭湯とかあったっけ?」 「風呂なんて家で入れよ」 「そんなわけにいかないだろ?」  龍生は「うーん」と考えた後、 「近くにちょっと古い所ならあるぞ」  と答えた。 「家に行く前に、銭湯につれてってくれ」 「わかったよ。奏でにも連絡しとく」 「ああ」  結局その日はしこたま呑んだ。お陰で夢を見ることも無かったが、またソファで寝たので体のあちこちが痛かったのと二日酔いで頭痛がひどかった。  翌朝龍生に乗せられ、職場に行くと、珠理はもう仕事を始めていた。  龍生が声をかける。 「今日は早いな」 「昨日は仕事がはかどらなかったんで、朝から機械を動かさないと間に合わないんすよ」  珠理が尚樹の方を見ながら言った。 「やれることはばんばん仕事を振ってくれよ。こいつだって仕事するために来てるんだし」  珠理は冷ややかな視線を尚樹に投げた後、 「じゃあ材料運んできてくれます?裏の方にあるんで」  と言って台車を持ってきた。 「この台車に乗せて機械の作業机に置いてください」  尚樹は張り切って裏の方に行くと、材料の金属の丸棒と角材を取ろうとした。 「ふぅふぅぅん」  1度で中々持ち上がらず、なんとか台車にのせると機械の作業机まで運んだ。  珠理はちらっと見た後、 「あと10、お願いします」  と言った。  尚樹は普段使わない筋肉を総動員して、何とか言われた数量を運ぶ事が出来た。  ぜえぜえと肩で息をしていると、隣で機械の作業をしていたユウキに声をかけられた。 「お疲れっす。だいぶ疲れたでしょ。取り敢えず休憩してきたらどうすか?」  折角だからその言葉に甘えることにする。  工場脇の狭い休憩スペースで休んでいると、ユウキも入ってきた。  どうやら、ユウキは喋り相手が欲しくて声をかけてきたようだった。 「あいつ、きついすね。俺に当たるときより尚樹さんにきつく当たってるんじゃないかな?」 「そう、ですね」 「敬語はやめてくださいよ。社長から聞きましたよ、社長と尚樹さん同い年だって。俺、今25なんで、尚樹さんより年下ですから」 「う、うん」 「そういえばまだ自己紹介してなかったですね。木村結城って言います。尚樹さんは昨日名前聞きましたからね。よろしくお願いします」  結城は右手を差し出した。その手を尚樹は握り返す。 「よろしく……」  握手した瞬間、珠理が休憩室に小走りで入ってきた。 「おう、お前も休憩か…」 「誰が休んで良いって言いました?」  珠理の目は真っ直ぐ尚樹に向いていた。 「ごめんなさい」 「俺が誘ったんだよ。それにもう休憩時間だろ」 「勝手なことしないでよ。」 「なに怒ってんだよ」 「うるさい」  尚樹は慌てて、 「俺が悪かったんです。すぐ仕事に戻りますから」  と言うと、珠理は一言、 「これからは休憩行くときは必ず声かけて下さい」  と言った。 「すいません」  いくら作品の取材のためとはいえ、尚樹は1ヶ月この工場で仕事をやりきれるかどうか自信が無くなっていた。

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