機械屋彼女と物書き彼氏

読了目安時間:2分

一章 7

取材対象

 それから、お昼が来るまで尚樹は工場内を見学させてもらった。  尚樹は、皆機械の前に立って忙しそうにしていて、邪魔になりそうだったので隅に立って仕事を見ていた。  皆よく動き、仕事をこなしていた。龍生も途中から作業に加わり、材料の金属棒をある程度の長さに切ったり、新人と思われる人のサポートをしている。  その中で、珠理の働きは凄かった。材料を機械にセットすると、器用にスイッチを動かして金属をどんどん削っていく。無駄な動きはない。 「ユウキ、手が止まってる。貴ちゃんの方がてきぱきやってるよ」  周りもきちんと見て、指示を飛ばす。貴ちゃんと呼ばれた男性の従業員が、珠理に機械の動かし方や加工の仕方を詳しく聞いていた。  気がつけばお昼の休憩時間になっていた。  龍生が尚樹に声をかける。 「俺の働きぶり、見てくれたか」 「おう。予想以上に動いてた」 「それにしては珠理の方ばっかり見てなかったか?」 「いや…」 「気になったのか」 「そんなんじゃないよ。」 「違うのか?」 「彼女、めっちゃてきぱき働くね。びっくりしちゃって」 「ああ。珠理はうちのエースみたいなもんだからな。元々筋も良かったし、何より努力家だよ」 「なんか、刺激を受けたよ。」 「そうか」  尚樹は珠理に触発され、次はばりばり働く女性を軸にして書いてみようかと考えていた。 「取材とかって、できるかな?」 「取材?珠理にってことか?」  龍生は怪訝そうな顔立ちになる。 「何か問題があるの?」  龍生は眉毛をかきながら答えた。 「半年くらい前な、働く女性の特集ってことで珠理に雑誌の取材が来たことあるんだよ」 「うん。」 「俺は良いんじゃないかって珠理に聞いたんだがな。頑なに拒んだんだ」 「何でなんだ?」 「理由も教えてくれなかった。すいませんって頭を下げるだけ」 「そっかあ。作品に生かすだけだから、顔や名前を出したりする訳じゃないんだけど」 「難しいかもな。ほんとに嫌そうだったからな。何か聞かれること自体」  尚樹はうーんとうなり、頭を抱えた。 「そうだ!良いこと思い付いた」  龍生がにっこりと尚樹の方を見る。  悪い予感がする。 「尚樹お前、ここで1ヶ月位働く気は無いか?」 「な、なんでそうなるんだよ」 「うちもちょうどバイトでも雇おうかと思ってたんだよ。年度末に向けて繁忙期だからな」 「ちょうど良くはないと思うんだけど…」 「お前がここで働けばさ、珠理とも話す機会もあるだろ。お前が小説家だってことさえ黙っとけば、堂々と話が出来るじゃないか」 「それって、倫理的にも問題ないか?」 「ばれなきゃ大丈夫!」 「俺も色々やることは…」 「あるのか?本当に?」  実際はなかった。 「じゃ、決まり。奏も喜ぶぞ。1ヶ月はここにいてくれるんだからな」  龍生のまっすぐな性格を、今まで尚樹は良いことだと思っていたが、この時だけは激しく恨んだ。  なんてむちゃくちゃなやつなんだろう、と。  そうして、尚樹の意思とは無関係に龍生の会社で働くことになってしまったのだった。

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